過飽和人工胆汁におけるコレステロール結晶析出に及ぼすアポ蛋白A1の抑制機序

コレステロール過飽和人工胆汁を用いて,アポ蛋白A1のコレステロール結晶析出抑制の作用機序を検討した.アポ蛋白A1を添加した人工胆汁(A1+群)と無添加人工胆汁(A1-群)の脂質粒子をカラムクロマトグラフィー法にて分画採取し,両群の脂質粒子の形態変化を透過型電子顕微鏡にて経時的に比較検討した.両群において胆汁中脂質粒子は,ミセル分画と非ミセル分画に分離でき,A1+群においてアポ蛋白A1は,ミセル分画のピークよりわずかに高分子量領域にピークを有して溶出された.A1+, A1-両群において,同分画を透過型電子顕微鏡で観察すると,直径200~400Åのdisc様粒子が認められ,A1-群では,粒子の迅速...

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Published in肝臓 Vol. 32; no. 12; pp. 1132 - 1137
Main Authors 田妻, 進, 相原, 直樹, 初鹿, 寿美恵, 峠, 誠司, 梶山, 梧朗, 佐々木, 晴敏, 山下, 郡司, 山本, 正夫, 佐川, 広, 佐々木, 雅敏, 水野, 重樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1991
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.32.1132

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Summary:コレステロール過飽和人工胆汁を用いて,アポ蛋白A1のコレステロール結晶析出抑制の作用機序を検討した.アポ蛋白A1を添加した人工胆汁(A1+群)と無添加人工胆汁(A1-群)の脂質粒子をカラムクロマトグラフィー法にて分画採取し,両群の脂質粒子の形態変化を透過型電子顕微鏡にて経時的に比較検討した.両群において胆汁中脂質粒子は,ミセル分画と非ミセル分画に分離でき,A1+群においてアポ蛋白A1は,ミセル分画のピークよりわずかに高分子量領域にピークを有して溶出された.A1+, A1-両群において,同分画を透過型電子顕微鏡で観察すると,直径200~400Åのdisc様粒子が認められ,A1-群では,粒子の迅速な凝集と融合が観察されたのに対し,A1+群では,その変化は極めて緩徐であった.以上,コレステロール過飽和人工胆汁において,アポ蛋白A1のdisc様粒子安定化による,コレステロール結晶析出の抑制が示唆された.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.32.1132