灸がもたらす温熱刺激が心臓血管応答に及ぼす影響

【背景】灸は,皮膚上の部位で艾を燃焼させ温熱刺激を生体に与える代替療法である。しかしながら,定量的なデータが不足しており、根拠に基づく医療手段として確立していない。【目的】本研究では,ヒトに対して灸刺激を行った際の心拍数及び血圧応答を明らかにすることを目的とした。【方法】被験者は,20名(男性13名 女性7名)の健常学生を対象とした。被験者は,実験室入室後,心電図用電極,血圧計及び皮膚温度計を取り付け,十分に安静にした後測定を行った。実験は,測定開始後2分間の時点で灸に点火し,その後6分間の心拍数,血圧及び皮膚温度を計測した。灸の施術部位は,右足の足三里穴を用いて行い,皮膚温度計の先端が足三里...

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Published in生体医工学 Vol. Annual59; no. Abstract; p. 286
Main Authors 中原, 英博, 河合, 英理子, 伊藤, 剛, 宮本, 忠吉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2021
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Summary:【背景】灸は,皮膚上の部位で艾を燃焼させ温熱刺激を生体に与える代替療法である。しかしながら,定量的なデータが不足しており、根拠に基づく医療手段として確立していない。【目的】本研究では,ヒトに対して灸刺激を行った際の心拍数及び血圧応答を明らかにすることを目的とした。【方法】被験者は,20名(男性13名 女性7名)の健常学生を対象とした。被験者は,実験室入室後,心電図用電極,血圧計及び皮膚温度計を取り付け,十分に安静にした後測定を行った。実験は,測定開始後2分間の時点で灸に点火し,その後6分間の心拍数,血圧及び皮膚温度を計測した。灸の施術部位は,右足の足三里穴を用いて行い,皮膚温度計の先端が足三里穴の中心部に位置するように医療用テープで固定した。灸点火前と後の比較は対応のあるt検定を用いた。【結果】心拍数は,灸に点火した後,皮膚温度が上昇するにしたがって緩やかに低下し,皮膚温度が低下するにつれて増加した。心拍数の値は,点火前(皮膚温度:平均30℃)の平均値64.3±7.5拍/分から皮膚温度が最高に達した際(皮膚温度:平均45度)に平均値62.3±1.3拍/分へと有意に減少した(p=0.005)。平均血圧には有意な変化は認められなかった。また,皮膚温度が38度に維持される温灸器を利用した場合においても,同様の徐脈効果が認められた。【結論】灸がもたらす局所的な温熱刺激は,ヒトの心拍数減少効果をもたらすことが明らかになった。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual59.286