術前診断し得た十二指腸カルチノイドの1例

十二指腸カルチノイドは比較的稀な腫瘍で, 悪性症例以外は, 偶発的に手術・剖検時に発見されるのが普通である. 我々は, タール便・心窩部痛を主訴として来院した胃潰瘍患者の十二指腸球部に, 内視鏡的に粘膜下腫瘍様病変を認め, 直視下生検によりカルチノイドと診断し, 胃摘出術により本症を確認しえた症例を経験したので報告する. 本腫瘍は十二指腸球部前上壁で粘膜固有層から粘膜下層内に存在し, 銀反応ではnonreactive typeであった. 電顕的には腫瘍細胞胞体内に1,000~4,000Aの円形分泌顆粒を認めたが, 小型の神経分泌顆粒は認めなかった. 本邦では40例の十二指腸カルチノイドの報告が...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 5; no. 1; pp. 58 - 69
Main Authors 篠原昭博, 三島崇輝, 幸田寿子, 石賀光明, 塚本真言, 坂本武司, 藤田 渉, 光野正人, 松井俊行, 吉岡一由, 水島睦枝, 伊藤慈秀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 1979
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ISSN0386-5924
DOI10.11482/kmj-j5(1)58

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Summary:十二指腸カルチノイドは比較的稀な腫瘍で, 悪性症例以外は, 偶発的に手術・剖検時に発見されるのが普通である. 我々は, タール便・心窩部痛を主訴として来院した胃潰瘍患者の十二指腸球部に, 内視鏡的に粘膜下腫瘍様病変を認め, 直視下生検によりカルチノイドと診断し, 胃摘出術により本症を確認しえた症例を経験したので報告する. 本腫瘍は十二指腸球部前上壁で粘膜固有層から粘膜下層内に存在し, 銀反応ではnonreactive typeであった. 電顕的には腫瘍細胞胞体内に1,000~4,000Aの円形分泌顆粒を認めたが, 小型の神経分泌顆粒は認めなかった. 本邦では40例の十二指腸カルチノイドの報告があるが, 内視鏡生検により術前に確定診断のついた症例は2例にすぎない. 消化管カルチノイドは粘膜筋板を中心に粘膜固有層および粘膜筋腫などの真の粘膜下腫瘍とは異なり, 直視下生検で腫瘍組織を採取出来る可能性が高く, したがって消化管カルチノイドに対する内視鏡生検診断の有用性を強調したい.
ISSN:0386-5924
DOI:10.11482/kmj-j5(1)58