脳底動脈Elongationと痴呆を伴った水頭症の1例

"正常圧性水頭症"は, Adamsら(1965)により一つの症候群として確立され, 以来多くの報告によりシャント手術の有効性が説かれてきたが, その原因, 発生機序についてはなお不明な点も少なくない. 1967年, Breigらは拡張・蛇行した脳底動脈により第3脳室の圧迫・変形を生じた水頭症3例を報告し, その発生原因として拡張した脳底動脈の拍動が脳室系につたわり, 髄液の通過を阻害するためとした. われわれも同様の所見を示した症例を経験したので報告した. その水頭症の発生原因として, 動脈硬化を基盤として基底核や脳室周囲の白質等に多発性脳硬塞が生じ, それにより生じた脳室...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 2; no. 2; pp. 103 - 109
Main Authors 中條節男, 後藤 弘, 深井博志, 野村信丞
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 1976
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ISSN0386-5924
DOI10.11482/kmj-j2(2)103

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Summary:"正常圧性水頭症"は, Adamsら(1965)により一つの症候群として確立され, 以来多くの報告によりシャント手術の有効性が説かれてきたが, その原因, 発生機序についてはなお不明な点も少なくない. 1967年, Breigらは拡張・蛇行した脳底動脈により第3脳室の圧迫・変形を生じた水頭症3例を報告し, その発生原因として拡張した脳底動脈の拍動が脳室系につたわり, 髄液の通過を阻害するためとした. われわれも同様の所見を示した症例を経験したので報告した. その水頭症の発生原因として, 動脈硬化を基盤として基底核や脳室周囲の白質等に多発性脳硬塞が生じ, それにより生じた脳室拡大を脳底動脈の拍動が更に促進せしめるのではないかと推察した. このような症例ではシャント手術の有効性を術前に予測することは困難であり, 手術適応の決定には慎重な配慮が必要かと考えられる. 「はじめに」1965年 Adamsら1)2)が進行性痴呆, 歩行障害, 尿失禁などにより特徴づけられる慢性症候性水頭症を正常髄液圧水頭症(NPH)として報告し, shunt手術の有効性を強調して以来, NPHは一つの疾患単位として認められるようになり, その外科的治療も一般的となってきた.
ISSN:0386-5924
DOI:10.11482/kmj-j2(2)103