肝細胞癌に対する肝動脈塞栓療法後の肝障害対策-高圧酸素療法の有用性に関する研究

• Published in: 肝臓 Vol. 34; no. 12; pp. 975 - 982
• Main Authors: 加藤, 博敏, 吉川, 正治, 江原, 正明, 古山, 信明, 大藤, 正雄
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 一般社団法人 日本肝臓学会 1993
• Subjects: 動脈血中ケトン体比; 肝動脈塞栓療法; 肝細胞癌; 肝障害; 高圧酸素療法
• ISSN: 0451-4203; 1881-3593
• DOI: 10.2957/kanzo.34.975

肝動脈塞栓療法(TAE)後の虚血性肝障害に対する高圧酸素療法(HBO)の有用性について検討した.基礎実験で,HBOは門脈阻血により低下したラット部分阻血肝モデルの動脈血中ケトン体比(AKBR)を有意に改善した.肝硬変合併肝細胞癌症例44例を対象としたrandomised studyにおいて,TAE直後に低下したAKBRが,TAE直後よりHBOを施行した群(TAE-HBO群)で3時間後より有意に改善した.プロトロンビン時間はTAE-HBO群で有意に短縮した.血清アルブミン値,血清総ビリルビン値,治療後1年以内の主腫瘍の最大腫瘍縮小率において,TAE-HBO群とTAE単独治療群の間に有意差は認められなかった.以上のごとく,HBOはTAEの抗腫瘍効果に悪影響を与えず,TAE後の肝障害に対して,肝内エネルギー状態を反映するAKBRおよびPTを早期より有意に改善する治療法であることが明らかとなった.