左下肺静脈が欠損した左単一肺静脈の1例

症例は56歳, 男性.高分化腺癌 (左S3) に対し左上葉切除, R2aリンパ節郭清を施行.術中, 全くの分葉不全肺であったが上肺静脈の走行は, 標準的と思われた. 術後, 徐々に胸部X線写真上の残存左下葉のうっ血所見が増強, 肺動脈造影で左側では造影剤は左肺動脈にうっ滞し静脈相への移行が見られなかった.残存左下葉潅流障害と診断し, 術後6日目に残存肺全摘除術を施行した.その結果, 本例では, 下肺静脈が欠損し, 下葉からのdrainage veinが肺内で上肺静脈に潅流し, 1本の肺静脈として左房に流入していた. 本例のような単一肺静脈の例は文献上稀であるが, 肺葉切除の際に, その存在を認...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 12; no. 4; pp. 529 - 534
Main Authors 宮田, 道夫, 目黒, 浩昭, 竹元, 伸之, 阿部, 典文, 小檜山, 律
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.05.1998
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.12.529

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Summary:症例は56歳, 男性.高分化腺癌 (左S3) に対し左上葉切除, R2aリンパ節郭清を施行.術中, 全くの分葉不全肺であったが上肺静脈の走行は, 標準的と思われた. 術後, 徐々に胸部X線写真上の残存左下葉のうっ血所見が増強, 肺動脈造影で左側では造影剤は左肺動脈にうっ滞し静脈相への移行が見られなかった.残存左下葉潅流障害と診断し, 術後6日目に残存肺全摘除術を施行した.その結果, 本例では, 下肺静脈が欠損し, 下葉からのdrainage veinが肺内で上肺静脈に潅流し, 1本の肺静脈として左房に流入していた. 本例のような単一肺静脈の例は文献上稀であるが, 肺葉切除の際に, その存在を認識されずに肺静脈処理が行われた場合, 残存肺はうっ血をきたし摘除を余儀なくされる.術中の, 上下肺静脈の確認は慎重にすべきである.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.12.529