肺シンチグラムを用いた煙吸入後の低酸素血症の検討

煙吸入後に低酸素血症を呈した6症例を対象に,肺血流シンチグラム(肺血流シンチ)と肺換気シンチグラム(肺換気シンチ)の検討を行なった. 肺血流シンチでは,受傷24時間後から非区域性,多発性の欠損像を胸膜側に認め,1~3週間持続した.一方,受傷1週間後に施行した肺換気シンチの1回吸入像では,欠損像はみられないものの,air trapping現象による洗い出し遅延が両肺の広範囲にみられ,換気の不均等分布が証明された.低酸素血症の原因は,肺野全体に及ぶ不均等換気に対して低酸素性肺血管収縮が十分に働かなかったか,またはair trapping部位とは関係ない部位に受傷機転に基づく肺血管攣縮が生じ,換気/...

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Published in日本臨床麻酔学会誌 Vol. 14; no. 10; pp. 755 - 761
Main Authors 今泉, 均, 坂野, 晶司, 藤村, 直幸, 中山, 禎人, 氏家, 良人, 金子, 正光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床麻酔学会 1994
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Summary:煙吸入後に低酸素血症を呈した6症例を対象に,肺血流シンチグラム(肺血流シンチ)と肺換気シンチグラム(肺換気シンチ)の検討を行なった. 肺血流シンチでは,受傷24時間後から非区域性,多発性の欠損像を胸膜側に認め,1~3週間持続した.一方,受傷1週間後に施行した肺換気シンチの1回吸入像では,欠損像はみられないものの,air trapping現象による洗い出し遅延が両肺の広範囲にみられ,換気の不均等分布が証明された.低酸素血症の原因は,肺野全体に及ぶ不均等換気に対して低酸素性肺血管収縮が十分に働かなかったか,またはair trapping部位とは関係ない部位に受傷機転に基づく肺血管攣縮が生じ,換気/血流比の不均等分布が引き起こされたためと推定された. 煙吸入による肺障害は,暴露直後には臨床症状を伴わない場合もあるが,数時間を経て顕在化する換気/血流の不均等分布によって発現する低酸素血症に注意を払うべきである.
ISSN:0285-4945
1349-9149
DOI:10.2199/jjsca.14.755