異所性肝組織から発生した肝細胞癌の1切除例

大網の異所性肝組織より発生した肝細胞癌の1切除例を報告する.症例は68歳の男性で可動性を有する右季肋部腫瘤を触知し,腹部超音波検査,CTで肝右葉下縁に接する腫瘍を指摘され,精査目的にて当院に入院した.血管造影検査では胃十二指腸動脈は著明に拡張し,肝下面に一致して大網動脈枝によって栄養される腫瘍が認められた.腹部CTでは少量の腹水と,播種性転移と思われる多数の小腫瘍も認められた.手術所見では大網を巻きこむように発育した径約12cmの主腫瘍と,腸間膜に播種性転移と考えられる多数の小腫瘍を認め,主腫瘍を小腫瘍とともに可及的に摘出した.組織学的には主腫瘍はEdmondson III型の肝細胞癌,小腫瘍...

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Published in肝臓 Vol. 33; no. 12; pp. 967 - 973
Main Authors 松田, 浩明, 森田, 荘二郎, 堀見, 忠司, 依光, 幸夫, 三浦, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1992
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.33.967

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Summary:大網の異所性肝組織より発生した肝細胞癌の1切除例を報告する.症例は68歳の男性で可動性を有する右季肋部腫瘤を触知し,腹部超音波検査,CTで肝右葉下縁に接する腫瘍を指摘され,精査目的にて当院に入院した.血管造影検査では胃十二指腸動脈は著明に拡張し,肝下面に一致して大網動脈枝によって栄養される腫瘍が認められた.腹部CTでは少量の腹水と,播種性転移と思われる多数の小腫瘍も認められた.手術所見では大網を巻きこむように発育した径約12cmの主腫瘍と,腸間膜に播種性転移と考えられる多数の小腫瘍を認め,主腫瘍を小腫瘍とともに可及的に摘出した.組織学的には主腫瘍はEdmondson III型の肝細胞癌,小腫瘍はその播種性転移であり,主腫瘍と肝臓との肉眼的および組織学的連続性は認められず,大網に発生した異所性肝細胞癌とその播種性転移と考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.33.967