粘液産生型肺腺癌巣に併存した肺クリプトコッカス症の1例
症例は77歳女性. 発熱を主訴として受診.胸部X線及びCTにて左下肺野に浸潤影を認め, 気管支鏡下擦過細胞診にてclass IV腺癌と診断された. 2000年5月, 左下葉切除術, ND1郭清が施行された. 病理組織学的に浸潤影は粘液産生型肺腺癌で, 癌巣の中には異物型巨細胞を伴った器質化病変があり, クリプトコッカスの感染を認めた. クリプトコッカスの菌体はすべて異物型巨細胞に貧食され, その形態は肉芽腫性肺炎型に相当した. 菌体は腺癌病巣以外にはなく, したがって本症例は腺癌の産生する粘液に感染した肺クリプトコッカス症と考えられた. 術後抗真菌剤投与は行わず経過観察としたが, 肺癌の再発や...
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Published in | 日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 16; no. 2; pp. 188 - 192 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
15.03.2002
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Subjects | |
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ISSN | 0919-0945 1881-4158 |
DOI | 10.2995/jacsurg.16.188 |
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Summary: | 症例は77歳女性. 発熱を主訴として受診.胸部X線及びCTにて左下肺野に浸潤影を認め, 気管支鏡下擦過細胞診にてclass IV腺癌と診断された. 2000年5月, 左下葉切除術, ND1郭清が施行された. 病理組織学的に浸潤影は粘液産生型肺腺癌で, 癌巣の中には異物型巨細胞を伴った器質化病変があり, クリプトコッカスの感染を認めた. クリプトコッカスの菌体はすべて異物型巨細胞に貧食され, その形態は肉芽腫性肺炎型に相当した. 菌体は腺癌病巣以外にはなく, したがって本症例は腺癌の産生する粘液に感染した肺クリプトコッカス症と考えられた. 術後抗真菌剤投与は行わず経過観察としたが, 肺癌の再発やクリプトコッカス症の再燃を認めていない. 本例のように完全切除がなされている症例で, かつ組織型が肉芽腫性病変で, 菌体の肺胞腔内散布所見がなければ, 術後抗真菌剤投与は必要は無いと考えられる. |
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ISSN: | 0919-0945 1881-4158 |
DOI: | 10.2995/jacsurg.16.188 |