日常生活における怒りと攻撃性の表出

本研究では, 日常生活における怒り喚起の要因を, 面接調査を行い検討した。怒り喚起の要因は, 損傷, 意図, 予測性の3要因である。調査対象者は, P-Fスタディによって, 「自罰」傾向の者7名, 「他罰」傾向の者7名, 合計14名を選定し, 2群の性格特性を比較して, 怒り喚起要因の評価の違いを検討した。その結果, 3要因はいずれも怒り喚起に有意に影響し, 性格特性による違いもみられなかった。また, 3つの要因の怒り喚起の効果を順位相関係数から測定した結果, 意図>損傷>予測性の順で強くなっていた。2つの性格特性を比較すると, 「自罰」傾向では, 意図と損傷の効果に差がみられなか...

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Bibliographic Details
Published in実験社会心理学研究 Vol. 36; no. 2; pp. 273 - 286
Main Author 山口, 浩
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本グループ・ダイナミックス学会 1996
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ISSN0387-7973
1348-6276
DOI10.2130/jjesp.36.273

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Summary:本研究では, 日常生活における怒り喚起の要因を, 面接調査を行い検討した。怒り喚起の要因は, 損傷, 意図, 予測性の3要因である。調査対象者は, P-Fスタディによって, 「自罰」傾向の者7名, 「他罰」傾向の者7名, 合計14名を選定し, 2群の性格特性を比較して, 怒り喚起要因の評価の違いを検討した。その結果, 3要因はいずれも怒り喚起に有意に影響し, 性格特性による違いもみられなかった。また, 3つの要因の怒り喚起の効果を順位相関係数から測定した結果, 意図>損傷>予測性の順で強くなっていた。2つの性格特性を比較すると, 「自罰」傾向では, 意図と損傷の効果に差がみられなかったが, 「他罰」傾向では, 意図の効果が損傷の効果よりも大きい傾向が示唆された。つまり, 怒りを喚起する要因は, 性格特性の違いに関わらず有意に働くが, 要因の評価は, 性格特性の違いによって異なることが明らかとなった。さらに面接調査により, 怒り喚起後の反応をみると, この要因の評価の違いが, 怒りを引き起こすできごとに直面した際にとる行動に影響を及ぼすことが示された。「自罰」傾向の者は、損傷を与えた相手への直接的な行動を避け, 損傷の回復を相手に求めない傾向がみられた。これに対して「他罰」傾向の者は, 損傷を受け怒りを感じた後に, その損傷を回復するように相手に直接行動をとろうとする傾向が示された。
ISSN:0387-7973
1348-6276
DOI:10.2130/jjesp.36.273