直接観察から迫る単独性有蹄類ニホンカモシカの生きざま ―社会進化プロセスの探求

「はじめに」「野生動物がどうやって生活しているのか知りたい, この目で見たい!」という単純な動機が私の研究のスタート地点だ. 研究活動をはじめた大学3年の頃は, ただ感覚的にフィールドや野生動物に興味があっただけで, ダーウィンの自然淘汰理論がなにかすら理解していなかった. 麻布大学で野生動物の魅力に心を躍らす二人の先生に出会い (南正人講師 (当時) と高槻成紀教授 (当時)), 動植物の進化や行動生態学の話を聞いた時には, 頭に衝撃がはしり, 目からウロコが止まらなかった. 同時に, 自分の足でフィールドに出て自分の目で自然を観察することの楽しさと重要性も学んだ. 気づけば, 私の研究の目...

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Published in哺乳類科学 Vol. 64; no. 1; pp. 143 - 149
Main Author 髙田, 隼人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本哺乳類学会 2024
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Summary:「はじめに」「野生動物がどうやって生活しているのか知りたい, この目で見たい!」という単純な動機が私の研究のスタート地点だ. 研究活動をはじめた大学3年の頃は, ただ感覚的にフィールドや野生動物に興味があっただけで, ダーウィンの自然淘汰理論がなにかすら理解していなかった. 麻布大学で野生動物の魅力に心を躍らす二人の先生に出会い (南正人講師 (当時) と高槻成紀教授 (当時)), 動植物の進化や行動生態学の話を聞いた時には, 頭に衝撃がはしり, 目からウロコが止まらなかった. 同時に, 自分の足でフィールドに出て自分の目で自然を観察することの楽しさと重要性も学んだ. 気づけば, 私の研究の目的は「野生動物の行動・生態の詳細を記載すること, そしてその適応的意義を解明すること」になった. 私がこの目的にアプローチするために最もよく用いる方法は「個体識別に基づく直接観察」である. 文字通り, 動物個体の一頭一頭を見た目 (や標識) から識別し, 各個体の行動を直接観察し, 記録する方法である.
ISSN:0385-437X
1881-526X
DOI:10.11238/mammalianscience.64.143