非浸潤性小腸転移をきたした多発S状結腸癌の1例
非浸潤性に小腸転移をきたした多発S状結腸癌の1例を報告する.患者は62歳,男性. 2002年2月よりふらつき感と全身倦怠感を認めたため来院した.入院時貧血を認めた以外,生化学的には異常はなく,腫瘍マーカーはCEA5.8ng/ml, CA19-9181U/mlと軽度高値を示した.注腸ではS状結腸に2カ所の陰影欠損像を認め,大腸内視鏡検査でも,規約3型の腫瘍が確認された.多発S状結腸癌の診断のもと手術を施行したところS状結腸の腫瘍とは別にTreitz靱帯より約120cmと回腸末端から15cmと25cmの3カ所の小腸に腫瘍がみられたため, S状結腸切除術 (D3) と2カ所の小腸切除術を施行した.な...
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Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 66; no. 5; pp. 1119 - 1124 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English |
Published |
日本臨床外科学会
25.05.2005
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Subjects | |
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Summary: | 非浸潤性に小腸転移をきたした多発S状結腸癌の1例を報告する.患者は62歳,男性. 2002年2月よりふらつき感と全身倦怠感を認めたため来院した.入院時貧血を認めた以外,生化学的には異常はなく,腫瘍マーカーはCEA5.8ng/ml, CA19-9181U/mlと軽度高値を示した.注腸ではS状結腸に2カ所の陰影欠損像を認め,大腸内視鏡検査でも,規約3型の腫瘍が確認された.多発S状結腸癌の診断のもと手術を施行したところS状結腸の腫瘍とは別にTreitz靱帯より約120cmと回腸末端から15cmと25cmの3カ所の小腸に腫瘍がみられたため, S状結腸切除術 (D3) と2カ所の小腸切除術を施行した.なお腹腔洗浄細胞診では悪性細胞は証明されなかった. S状結腸癌と小腸腫瘍の病理組織学的所見ではともに中分化腺癌で, S状結腸癌の静脈侵襲が極めて高度で,しかも小腸腫瘍の主座が粘膜下層にあったことより, S状結腸癌の非浸潤性小腸転移と診断された.患者は術後5FUを中心とした化学療法を継続しているが, 2年7カ月経過した現在,再発はなく元気に社会復帰している.本例のような非浸潤性の小腸転移症例は,検索した限りでは自験例を含め8例のみで極めて稀である. |
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ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.66.1119 |