術前診断に難渋した多発性アメーバ性肝膿瘍の1例

症例は51歳の男性で,発熱と右季肋部痛を主訴に当院外来を受診し,急性胆嚢炎を伴う胆石症の診断で入院となった.抗生剤を投与したが,解熱せず,入院時腹部CTで認めた多発性肝腫瘤が急速に増大し肝膿瘍の急性憎悪と診断した.超音波ガイド下経皮経肝膿瘍ドレナージ (PTAD) を施行したが,ドレナージは効果的でなかった.膿汁の細菌培養とアメーバ原虫の検鏡を行ったが,いずれも陰性,アメーバ血清抗体も陰性,HIV陰性であった.膿瘍は増大し全身状態が悪化したため,緊急手術(肝膿瘍ドレナージ)を施行した.術中,採取した膿よりアメーバ栄養体が発見されたためアメーバ性肝膿瘍と診断した.肝膿瘍においては,アメーバ性肝膿...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 67; no. 5; pp. 1079 - 1084
Main Authors 安藤, 正幸, 兼子, 順, 本山, 一夫, 前島, 静顕, 伊藤, 雅史, 関根, 毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.05.2006
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.67.1079

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Summary:症例は51歳の男性で,発熱と右季肋部痛を主訴に当院外来を受診し,急性胆嚢炎を伴う胆石症の診断で入院となった.抗生剤を投与したが,解熱せず,入院時腹部CTで認めた多発性肝腫瘤が急速に増大し肝膿瘍の急性憎悪と診断した.超音波ガイド下経皮経肝膿瘍ドレナージ (PTAD) を施行したが,ドレナージは効果的でなかった.膿汁の細菌培養とアメーバ原虫の検鏡を行ったが,いずれも陰性,アメーバ血清抗体も陰性,HIV陰性であった.膿瘍は増大し全身状態が悪化したため,緊急手術(肝膿瘍ドレナージ)を施行した.術中,採取した膿よりアメーバ栄養体が発見されたためアメーバ性肝膿瘍と診断した.肝膿瘍においては,アメーバ性肝膿瘍を念頭において,抗生剤の投与が有効でない時点で,早期に血清学的検査を行い,メトロニダゾールを予防的に投与することも重要であると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.67.1079