右心室壁転移をきたした肝細胞癌の1例

症例は76歳の男性で,肝右葉全域を占める肝細胞癌と下行結腸癌の同時性重複癌に対し,前方アプローチによる肝右3区域切除術+下行結腸切除術を行った. H4, im3, vp2, vv2で,肝の癌遺残に対して肝動注療法を行い,残肝のコントロールは良好であった.術後カ月に呼吸苦が出現し,心エコー,胸部CTにより右心室壁の腫瘤が発見され,心転移が診断された.心転移発見から心不全で死亡するまでの6カ月間,対症療法により全身状態はよく保たれた.肝細胞癌の遠隔転移は肺,骨,副腎などがその大部分を占めるが,心転移をきたした稀な1例を経験したので報告した.本例は肝細胞癌の転移経路を考察する上で興味深いと思われた....

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 61; no. 6; pp. 1542 - 1546
Main Authors 塩田, 摂成, 小西, 伊智郎, 佐藤, 尚喜, 星野, 和義, 梶谷, 真司, 阿部, 重郎, 岸本, 宏之, 浜副, 隆一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.06.2000
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Summary:症例は76歳の男性で,肝右葉全域を占める肝細胞癌と下行結腸癌の同時性重複癌に対し,前方アプローチによる肝右3区域切除術+下行結腸切除術を行った. H4, im3, vp2, vv2で,肝の癌遺残に対して肝動注療法を行い,残肝のコントロールは良好であった.術後カ月に呼吸苦が出現し,心エコー,胸部CTにより右心室壁の腫瘤が発見され,心転移が診断された.心転移発見から心不全で死亡するまでの6カ月間,対症療法により全身状態はよく保たれた.肝細胞癌の遠隔転移は肺,骨,副腎などがその大部分を占めるが,心転移をきたした稀な1例を経験したので報告した.本例は肝細胞癌の転移経路を考察する上で興味深いと思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.61.1542