急性腸管虚血の臨床的検討-特に肝障害合併例の分析

急性腸管虚血29症例(腸間膜動脈閉塞14, 非閉塞性腸管梗塞15例)を対象に基礎疾患,発症様式,背景因子および予後決定因子についてretrospectiveに検討した.ほとんどの症例が心大血管の基礎疾患を有していた.半数近くが,手術を契機に発症していた.診断時ショックが55%に,臓器不全が52%に認められた.全例に腸管切除がなされ, 7例には血栓摘出術が同時に行われた.死亡率は59%であった.予後不良因子として,診断時肝酵素の上昇,術後発症,有ショック,虚血範囲が小腸と大腸に及ぶもの,2個以上の臓器不全であった.肝酵素の著しく上昇している群では腎不全, DICの合併も高く,死亡率も高かった.急...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 59; no. 6; pp. 1501 - 1506
Main Authors 田中, 紘輝, 中村, 登, 渋谷, 寛, 門野, 潤, 石崎, 直樹, 宮崎, 俊明, 浜田, 信男, 平, 明
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本臨床外科学会 25.06.1998
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Summary:急性腸管虚血29症例(腸間膜動脈閉塞14, 非閉塞性腸管梗塞15例)を対象に基礎疾患,発症様式,背景因子および予後決定因子についてretrospectiveに検討した.ほとんどの症例が心大血管の基礎疾患を有していた.半数近くが,手術を契機に発症していた.診断時ショックが55%に,臓器不全が52%に認められた.全例に腸管切除がなされ, 7例には血栓摘出術が同時に行われた.死亡率は59%であった.予後不良因子として,診断時肝酵素の上昇,術後発症,有ショック,虚血範囲が小腸と大腸に及ぶもの,2個以上の臓器不全であった.肝酵素の著しく上昇している群では腎不全, DICの合併も高く,死亡率も高かった.急性腸管虚血の治療成績をあげるには,早期診断と早期治療が肝要である.その為にはハイリスク群を設定し,この様な患者に腹痛が生じた場合,腹部血管造影を施行し,その所見に基づいた治療方針を立てる事が大切である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.59.1501