直腸輪状狭窄をきたし直腸癌と鑑別が困難であった前立腺癌の1例

症例は58歳の男性.主訴は,肛門痛と排尿困難.直腸診にて全周性の腫瘤を触知し,腹部CT検査では直腸,前立腺が一塊となった腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査では,歯状線直上より全周性の狭窄を認めたが,生検では確定診断に至らなかった.直腸癌または前立腺癌を疑い,骨盤内臓器全摘術を施行した.病理学的検査では低分化型腺癌.免疫組織染色を行い, CEA陰性, PSA陽性であったため,前立腺癌と診断した.術後の経過は良好であった.前立腺癌は前立腺被膜およびDenonvilliers筋膜によって防御されており,浸潤が直腸壁におよぶことは稀である.自験例では,高度の直腸浸潤による狭窄病変のために原発性直腸癌に似た様...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 66; no. 7; pp. 1743 - 1747
Main Authors 梅本, 健司, 木村, 文彦, 三好, 秀幸, 山本, 正之, 平塚, 正弘, 国府, 育央
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.07.2005
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.66.1743

Cover

More Information
Summary:症例は58歳の男性.主訴は,肛門痛と排尿困難.直腸診にて全周性の腫瘤を触知し,腹部CT検査では直腸,前立腺が一塊となった腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査では,歯状線直上より全周性の狭窄を認めたが,生検では確定診断に至らなかった.直腸癌または前立腺癌を疑い,骨盤内臓器全摘術を施行した.病理学的検査では低分化型腺癌.免疫組織染色を行い, CEA陰性, PSA陽性であったため,前立腺癌と診断した.術後の経過は良好であった.前立腺癌は前立腺被膜およびDenonvilliers筋膜によって防御されており,浸潤が直腸壁におよぶことは稀である.自験例では,高度の直腸浸潤による狭窄病変のために原発性直腸癌に似た様相を呈した.直腸の輪状狭窄を診療する際には,前立腺癌も念頭において血清PSA値の測定やCEA, PSAの免疫組織染色を積極的に行うべきであると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.66.1743