広範な門脈内ガス血症を呈した上腸間膜動脈塞栓症の1例

症例は認知症のため他院に入院中であった85歳,女性. 2004年6月21日腹痛が出現.腹部X線写真で腸閉塞の所見を認めた. 23日下血が認められたため,精査加療目的に当院外科に紹介された.身体所見では腹部は膨隆し,著明な腹膜刺激症状を認めた.腹部CT検査で,門脈内のガス像を認め,腹水を認めた.汎発性腹膜炎の診断で,発症からおよそ53時間後に緊急手術を施行した.開腹所見ではTreitz靭帯から結腸脾彎曲までの広範囲の腸管壊死を認め,門脈内ガス血症を伴う上腸間膜動脈閉塞症であった.小腸全切除術,拡大結腸右半切除術,空腸瘻造設術を施行した.術後経過は良好で,術後20日で他院に軽快転院した.門脈内ガス...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 67; no. 9; pp. 2196 - 2201
Main Authors 佐治, 裕, 広瀬, 邦弘, 渡辺, 正明, 高橋, 周作
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.09.2006
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.67.2196

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Summary:症例は認知症のため他院に入院中であった85歳,女性. 2004年6月21日腹痛が出現.腹部X線写真で腸閉塞の所見を認めた. 23日下血が認められたため,精査加療目的に当院外科に紹介された.身体所見では腹部は膨隆し,著明な腹膜刺激症状を認めた.腹部CT検査で,門脈内のガス像を認め,腹水を認めた.汎発性腹膜炎の診断で,発症からおよそ53時間後に緊急手術を施行した.開腹所見ではTreitz靭帯から結腸脾彎曲までの広範囲の腸管壊死を認め,門脈内ガス血症を伴う上腸間膜動脈閉塞症であった.小腸全切除術,拡大結腸右半切除術,空腸瘻造設術を施行した.術後経過は良好で,術後20日で他院に軽快転院した.門脈内ガス血症を伴う上腸間膜動脈閉塞症は救命率が非常に低く,予後不良である.われわれの検索しえた限り本邦での救命例は,本症例を含め9例の報告のみである.文献的考察を加え報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.67.2196