多発性気管支嚢胞の1例

縦隔腫瘍は日常診療においてしばしば経験する疾患である.今回,傍気管と傍食道の2カ所に発生した気管支嚢胞の稀な1例を経験したので報告する.症例は51歳,男性.検診で胸部X線上異常陰影を指摘され当科受診となった.受診時の胸部X線では右上縦隔に辺縁平滑な腫瘤陰影を,胸部CTで右上縦隔に径3cm大の辺縁平滑なsoft tissue massをそれぞれ認めた.MRIでは連続性のない径4cm大の腫瘤を上縦隔に2個認め, T1強調像で高信号, T2強調像で極めて高信号,ガドリニウムによる造影効果は認めず嚢胞が疑われた.気管支嚢胞の診断下に摘出術を施行した.両腫瘤とも摘出は容易であった.嚢胞の内容は粘稠ゼリー...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 59; no. 5; pp. 1272 - 1276
Main Authors 大楽, 耕司, 西, 健太郎, 杉, 和郎, 江里, 健輔, 亀井, 敏昭
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本臨床外科学会 25.05.1998
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Summary:縦隔腫瘍は日常診療においてしばしば経験する疾患である.今回,傍気管と傍食道の2カ所に発生した気管支嚢胞の稀な1例を経験したので報告する.症例は51歳,男性.検診で胸部X線上異常陰影を指摘され当科受診となった.受診時の胸部X線では右上縦隔に辺縁平滑な腫瘤陰影を,胸部CTで右上縦隔に径3cm大の辺縁平滑なsoft tissue massをそれぞれ認めた.MRIでは連続性のない径4cm大の腫瘤を上縦隔に2個認め, T1強調像で高信号, T2強調像で極めて高信号,ガドリニウムによる造影効果は認めず嚢胞が疑われた.気管支嚢胞の診断下に摘出術を施行した.両腫瘤とも摘出は容易であった.嚢胞の内容は粘稠ゼリー状で,術後の病理組織診断では両者とも気管支嚢胞と診断された.本症例では頸部~胸部MRI(冠状断像)により頸部食道の病変をも指摘できた.本疾患に対しては多発例があることを念頭におき,術前検査には十分な配慮が必要と考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.59.1272