び漫性肝転移において小細胞癌の組織像を呈した胃癌の1例

患者は79歳,男性.検診にて胃癌および肝障害を指摘され,当院入院.上部消化管造影および内視鏡検査にて胃上中部小彎に3型胃癌を認めた.腹部CTにて#12リンパ節転移および門脈本幹腫瘍塞栓を認めたが,肝実質は僅かな濃染のムラを認めるもののSOLは認められなかった.術前検査中,吐下血からショック状態となり止血目的に緊急に脾摘を伴う胃全摘を施行した.病理組織では脈管侵襲傾向の強い高分化腺癌で深達度はse, intermediate type, INFβ, ly3, v2であった.術後より急速にDIC状態となり翌日出血性ショックにて死亡した.剖検の結果,門脈腫瘍栓があり,転移巣は肝,骨髄,前立腺と,肺門...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 64; no. 5; pp. 1112 - 1116
Main Authors 今津, 浩喜, 落合, 正宏, 桜井, 洋一, 松原, 俊樹, 長谷川, 茂, 溝口, 良順
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本臨床外科学会 25.05.2003
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Summary:患者は79歳,男性.検診にて胃癌および肝障害を指摘され,当院入院.上部消化管造影および内視鏡検査にて胃上中部小彎に3型胃癌を認めた.腹部CTにて#12リンパ節転移および門脈本幹腫瘍塞栓を認めたが,肝実質は僅かな濃染のムラを認めるもののSOLは認められなかった.術前検査中,吐下血からショック状態となり止血目的に緊急に脾摘を伴う胃全摘を施行した.病理組織では脈管侵襲傾向の強い高分化腺癌で深達度はse, intermediate type, INFβ, ly3, v2であった.術後より急速にDIC状態となり翌日出血性ショックにて死亡した.剖検の結果,門脈腫瘍栓があり,転移巣は肝,骨髄,前立腺と,肺門および肝門部リンパ節へ転移を認め,剖検上の死因としては,肝転移および門脈腫瘍栓による急激に進行した肝不全とDICに伴う出血性ショックによると診断された.術前CTで指摘できなかった肝転移は腫瘤を形成しない腫瘍細胞のび漫性転移であった.これら肝を含めた転移先では,腫瘍は小細胞癌様で免疫組織化学染色では高分化腺癌の像を呈する原発巣,門脈腫瘍栓がchromogranin A, CD56 (NCAM)染色で陰性であったのに対して,門脈周辺リンパ節および肝転移巣は陽性であった. H-E染色所見上脈管形成傾向がみられた部分もあったことから原発巣の高分化腺癌の転移巣における小細胞癌への脱分化と考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.64.1112