がんの再発を生きるということ

目的:本研究では,がん患者が再発がんを生きる経験について,経験者の視点から探求することを目的とした.方法:現象学的アプローチを用いた質的記述的研究である.一般病院の外科で加療中の,再発がんを患う患者に,非構造化面接法を実施し,村上の方法を参考に分析を行った.また,分析を進める視点のとり方として,人間存在の在り方を基礎づけたHeideggerの理論を基盤においた.結果:死は〈もしも〉と仮定されるが,まったくの仮想ではなく,具体として現れた.しかし,参加者は,時間を〈少しずつ〉進め,生きる手ごたえを確かなものにしていた.そして,自分自身をがん患者としてひと括りにするのではなく,個を重みづけする〈そ...

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Published in日本がん看護学会誌 Vol. 33; p. 33_kawabata_20191204
Main Author 川端, 愛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本がん看護学会 04.12.2019
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Summary:目的:本研究では,がん患者が再発がんを生きる経験について,経験者の視点から探求することを目的とした.方法:現象学的アプローチを用いた質的記述的研究である.一般病院の外科で加療中の,再発がんを患う患者に,非構造化面接法を実施し,村上の方法を参考に分析を行った.また,分析を進める視点のとり方として,人間存在の在り方を基礎づけたHeideggerの理論を基盤においた.結果:死は〈もしも〉と仮定されるが,まったくの仮想ではなく,具体として現れた.しかし,参加者は,時間を〈少しずつ〉進め,生きる手ごたえを確かなものにしていた.そして,自分自身をがん患者としてひと括りにするのではなく,個を重みづけする〈それぞれ〉性を問いながら,他者のために役立つ〈この手〉が届く距離に在ることが励みになっていた.結論:再発がんを患う患者は,死を仮定しながら,少しずつ時間を進め,自己を活そうとする経験をしており,個別の物語を紡ぎ始めていた.
ISSN:0914-6423
2189-7565
DOI:10.18906/jjscn.33_kawabata_20191204