家族性α1-antitrypsin欠損症(“Pi null” type)の一家系

文献上世界で4家系目と考えられる家族性α1-antitrypsin (α1-AT)欠損症(Pi null)の1家系を報告した.発端者は27才,男子,若年性高血圧症と左頚動脈瘤破裂で初診,頚動脈瘤切除手術を受けた.入院時血清電気泳動でα1-globulinの異常低値が見出され, α1-ATは単純免疫拡散法で10mg/dl以下, counterimmunoelectrophoresisで0.371mg/dl以下, Laurell法によるtrypsin inhibitory capacityは0.050mg Try/ml血清と極端な低値を示した.酸殿粉ゲル電気泳動,交叉免疫電気泳動法にて,表現型はP...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 67; no. 1; pp. 50 - 56
Main Authors 大橋, 晃, 渡辺, 靖之, 中井, 秀紀, 猪熊, 茂子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 01.01.1978
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Summary:文献上世界で4家系目と考えられる家族性α1-antitrypsin (α1-AT)欠損症(Pi null)の1家系を報告した.発端者は27才,男子,若年性高血圧症と左頚動脈瘤破裂で初診,頚動脈瘤切除手術を受けた.入院時血清電気泳動でα1-globulinの異常低値が見出され, α1-ATは単純免疫拡散法で10mg/dl以下, counterimmunoelectrophoresisで0.371mg/dl以下, Laurell法によるtrypsin inhibitory capacityは0.050mg Try/ml血清と極端な低値を示した.酸殿粉ゲル電気泳動,交叉免疫電気泳動法にて,表現型はPi--と同定された.二次性高血圧症は否定され,胸部X線像では肺気腫を疑わせる所見はないが,血流および吸入シンチグラムでは肺気腫を思わせる所見であり,呼吸機能検査では, %FEV1, MVVの低下, RV, RV/TLCの増大, Cdyn/Cstの低下, CV/VCの増大, DLCOの低下など,肺気腫の初期像を疑わせる所見であつた.家族17名の検索では,兄,姉がPi--,両親含め8名がPiM-,他はPiMMであつた.両親はいとこ結婚であつた. Pi--の兄は胸部X線像上肺気腫が疑われた.これまで報告されている3家系4名を含め, Pi--と疾病との関連,遺伝形式などについて考察を加えた.今後長期にわたる経過観察により,肺気腫,高血圧肝疾患がどのように進展するか明らかにしていく予定である.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.67.50