重度の嚥下障害例に対する喉頭気管分離術 手術症例106例の検討

1990年8月から1996年3月までの間に,脳性麻痺や神経変性疾患を中心とする反復性誤嚥性肺炎患者106例(神経内科31例,神経小児科73例,脳外科2例)に対して1975年にLindemanが考案した喉頭気管分離術を施行した.術式は気管を第2-3または第3-4気管輪間にて水平に離断し,喉頭側気管は食道と端側吻合,肺側気管で気管孔を形成する方法であった.我々はいくつかのパラメータについて各々追跡しえた症例を評価し,誤嚥性肺炎を合併するどのような患者に,いつ頃この術式を施行するか,また喉頭全摘を選択した方が良いと思われる症例はどのようなものかを検討した.その結果,術後誤嚥は消失し肺炎の頻度は85例...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 2; no. 1; pp. 29 - 35
Main Authors 渡辺, 剛士, 内藤, 理恵, 鈴木, 康之, 玉川, 公子, 清水, 賢, 内藤, 玲, 堀口, 利之, 舟橋, 満寿子, 林田, 哲郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 20.12.1998
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
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ISSN1343-8441
2434-2254
DOI10.32136/jsdr.2.1_29

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Summary:1990年8月から1996年3月までの間に,脳性麻痺や神経変性疾患を中心とする反復性誤嚥性肺炎患者106例(神経内科31例,神経小児科73例,脳外科2例)に対して1975年にLindemanが考案した喉頭気管分離術を施行した.術式は気管を第2-3または第3-4気管輪間にて水平に離断し,喉頭側気管は食道と端側吻合,肺側気管で気管孔を形成する方法であった.我々はいくつかのパラメータについて各々追跡しえた症例を評価し,誤嚥性肺炎を合併するどのような患者に,いつ頃この術式を施行するか,また喉頭全摘を選択した方が良いと思われる症例はどのようなものかを検討した.その結果,術後誤嚥は消失し肺炎の頻度は85例中80例で減少し,呼吸機能や睡眠・覚醒のリズムの改善がみられるものが多かった.全量経口摂取可能となった症例は神経内科の患者24例中14例(58%)で,神経小児科の患者61例中13例(21%)であった.経口摂取可能になるかどうかは,患者本人の神経学的な潜在的能力にかかっている.術後空気嚥下とげっぷを利用して発声によるコミュニケーションが可能となった患者も2例あった. 主な合併症は気管食道吻合部の縫合不全で,その18例中5例が喉頭全摘術へ変更せざるを得なかったが,これらの症例は術後の頸部の安静が保てない緊張の強いもの,嘔吐反射・咳反射の強いもの,全例高齢者で気管軟骨の固い男性であった. 本術式開始以来,年々手術症例が増加しているが,術式の再建可能なこと,喉頭の温存で家族や本人に手術が受容されやすいこと,救命率の向上により重症障害児が相対的に増加していること,在宅での呼吸器管理も可能になるなど慢性期患者のQOLの向上が求められていることなどの要因が重なった為と考える.我々は分離術は他の手術的方法よりも誤嚥を完全に予防できること,再建可能な術式であること,大きな合併症が少ないことから,優れた術式と考える.
ISSN:1343-8441
2434-2254
DOI:10.32136/jsdr.2.1_29