改良型polyvinyl alcohol hydrogel人工気管の実験的研究

含水率90%の軟質polyvinyl alcohol hydrogel(日本石油, 以下PVA-H)を用い, 内径12mm, 壁厚2mm, 長さ50mmの管を作製し, 縫合および内腔保持の目的で管両端および中央部にTeflon ringを装着し, 改良型PVA-H人工気管(以下I-PVA-H管)とした. これを雑種成犬の頸部気管に移植し, 人工気管としての有用性を検討した. なお, 移植時, 吻合部を含めI-PVA-H管をdacron meshで被覆した. 移植14頭のうち, 3頭は移植後43, 51, 120日目に屠殺し, 1頭は92日目の検査中に死亡した. 他の10頭は7~86日目に死亡し...

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Published in人工臓器 Vol. 16; no. 6; pp. 1830 - 1835
Main Authors 田中, 章一, 江里, 健輔, 毛利, 平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本人工臓器学会 1987
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Summary:含水率90%の軟質polyvinyl alcohol hydrogel(日本石油, 以下PVA-H)を用い, 内径12mm, 壁厚2mm, 長さ50mmの管を作製し, 縫合および内腔保持の目的で管両端および中央部にTeflon ringを装着し, 改良型PVA-H人工気管(以下I-PVA-H管)とした. これを雑種成犬の頸部気管に移植し, 人工気管としての有用性を検討した. なお, 移植時, 吻合部を含めI-PVA-H管をdacron meshで被覆した. 移植14頭のうち, 3頭は移植後43, 51, 120日目に屠殺し, 1頭は92日目の検査中に死亡した. 他の10頭は7~86日目に死亡し, 死因は移植管周囲の感染(7頭), 肺炎(2頭), 移植管喀出(1頭)であった. 1ヵ月以内に死亡した3頭中2頭の吻合部は, 縫合糸でよく固定され, 内腔に肉芽の形成はなかった. 他の1頭は, 吻合部気管膜様部に亀裂を生じていた. 周囲組織からのPVA-Hへの反応は少なく, I-PVA-H管の組織による固定はなかった. mesh周囲には結合組織の増生がみられた. しかし, 1ヵ月以上生存した11頭全例で吻合部離開が生じ, うち9頭で離開口より内腔に肉芽が突出していた. 被覆したmeshは感染のため周囲組織より遊離し, 長期的にはI-PVA-H管固定に有用でなかった. 肉芽表面は一部扁平上皮細胞で被われ, 内部には炎症性細胞浸潤がみられた. 全例でI-PVA-H管内腔は, Teflon ringによりよく保持されていた. 今回作製したI-PVA-H管は, 長期固定が困難で, 移植成績は満足すべきものではなかったが, 十分な強度をもち, 柔軟性に富み, 気密で, 組織反応も少なく, 代用気管としての条件を備えているので, 縫合部形状に改良を加えれば臨床応用可能と考えられた.
ISSN:0300-0818
1883-6097
DOI:10.11392/jsao1972.16.1830