免疫不全患者におけるサイトメガロウイルス感染肝の病態

サイトメガロウイルス(CMV)全身感染症を合併した免疫不全患者剖検例において,CMVの肝に及ぼす影響を検討した.対象8例のうち6例は特徴的な封入体によって,2例はCMV関連抗原によってCMVの肝感染を確認した.封入体は主として核内に観察されたが,細胞質内にもみられた.CMV感染は肝細胞,胆管上皮細胞,門脈域の血管内皮細胞およびマクロファージと広くみられた.その分布は肝細胞では門脈域周辺領域と小葉間隔壁沿いに,胆管上皮細胞では外径10~35μmの小葉間胆管に局在する傾向にあった.CMVの感染により細胞自体は種々の変性を生じていても,壊死性変化は伴っておらず,周辺の組織を含めて炎症所見に乏しかつた...

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Published in肝臓 Vol. 31; no. 8; pp. 915 - 920
Main Authors 伊坪, 真理子, 坂口, 正巳, 河辺, 朋信, 佐多, 斉, 高橋, 宏樹, 宮崎, 寛, 亀田, 治男, 田中, 貢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1990
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Summary:サイトメガロウイルス(CMV)全身感染症を合併した免疫不全患者剖検例において,CMVの肝に及ぼす影響を検討した.対象8例のうち6例は特徴的な封入体によって,2例はCMV関連抗原によってCMVの肝感染を確認した.封入体は主として核内に観察されたが,細胞質内にもみられた.CMV感染は肝細胞,胆管上皮細胞,門脈域の血管内皮細胞およびマクロファージと広くみられた.その分布は肝細胞では門脈域周辺領域と小葉間隔壁沿いに,胆管上皮細胞では外径10~35μmの小葉間胆管に局在する傾向にあった.CMVの感染により細胞自体は種々の変性を生じていても,壊死性変化は伴っておらず,周辺の組織を含めて炎症所見に乏しかつた.臨床的にも肝機能検査成績の異常は一般に軽度であり,またその主体はCMV感染以外に起因するものと推測された.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.31.915