肝動脈塞栓術を契機に肺転移陰影の消失をみた原発性肝癌の1例
症例は52歳男性.40歳頃より肝機能障害を指摘されていた.52歳に胆石症と診断され,胆嚢摘出術施行時に肉眼的に肝硬変を認めた.7カ月後,AFP 410ng/mlと異常値を呈し,その3カ月後には血痰が出現したため入院した.入院後AFP値は32,000ng/mlまで上昇し,腹部超音波検査,血管造影,胸部CT検査より,多発性肺転移を伴う原発性肝癌と診断した.動脈塞栓術(以下TAE)およびMMC 16mgの動注療法を施行し,PSK(3g/日)の経口投与を開始したところ,AFP値は20ng/ml以下に低下し,肺転移陰影の消失を認めた.TAE後1年半を経た現在も全身状態良好であり,AFP値は正常範囲内に保...
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Published in | 肝臓 Vol. 28; no. 3; pp. 374 - 380 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本肝臓学会
1987
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Subjects | |
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ISSN | 0451-4203 1881-3593 |
DOI | 10.2957/kanzo.28.374 |
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Summary: | 症例は52歳男性.40歳頃より肝機能障害を指摘されていた.52歳に胆石症と診断され,胆嚢摘出術施行時に肉眼的に肝硬変を認めた.7カ月後,AFP 410ng/mlと異常値を呈し,その3カ月後には血痰が出現したため入院した.入院後AFP値は32,000ng/mlまで上昇し,腹部超音波検査,血管造影,胸部CT検査より,多発性肺転移を伴う原発性肝癌と診断した.動脈塞栓術(以下TAE)およびMMC 16mgの動注療法を施行し,PSK(3g/日)の経口投与を開始したところ,AFP値は20ng/ml以下に低下し,肺転移陰影の消失を認めた.TAE後1年半を経た現在も全身状態良好であり,AFP値は正常範囲内に保たれ,胸部X線上異常陰影は認められていない.この機序に関しては,TAE後,原発巣の縮小即ち腫瘍量の減少に伴い宿主の免疫能が改善することにより,肺転移巣が消失したと推察された. 以上より遠隔転移を有する肝癌に対してもTAEを行なうことは意味のあることと考えられる. |
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ISSN: | 0451-4203 1881-3593 |
DOI: | 10.2957/kanzo.28.374 |