尾状葉に発生しダンベル型を呈した比較的大きな肝Focal Nodular Hyperplasiaの1例

症例は22歳,女性.下痢,嘔吐を主訴とし,2年の経過の後肝腫瘤を指摘され当科入院となった.肝機能検査ではγ-GTPの軽度の上昇以外異常を認めなかった.腹部超音波検査,CTでは尾状葉を中心に右方向には右葉内に,左方向には肝外に発育し,全体としてダンベル型を呈する21cm大の腫瘤を認めた.血管造影では著明なhypervascularityを示し,二次的Budd-Chiari症候群を合併していた.肝細胞癌を最も疑い,低体温麻酔下に拡大右葉切除(右葉および尾状葉の切除)にて腫瘤を一塊に切除した.開腹時肝周囲のリンパ管が著明に拡張していたが,術中腫瘍の血行遮断によって拡張が消退した.病理所見は中心瘢痕を...

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Published in肝臓 Vol. 30; no. 3; pp. 358 - 363
Main Authors 上坂, 克彦, 幕内, 雅敏, 高山, 忠利, 山崎, 晋, 長谷川, 博, 高安, 賢一, 村松, 幸男, 森山, 紀之, 広橋, 説雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1989
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Summary:症例は22歳,女性.下痢,嘔吐を主訴とし,2年の経過の後肝腫瘤を指摘され当科入院となった.肝機能検査ではγ-GTPの軽度の上昇以外異常を認めなかった.腹部超音波検査,CTでは尾状葉を中心に右方向には右葉内に,左方向には肝外に発育し,全体としてダンベル型を呈する21cm大の腫瘤を認めた.血管造影では著明なhypervascularityを示し,二次的Budd-Chiari症候群を合併していた.肝細胞癌を最も疑い,低体温麻酔下に拡大右葉切除(右葉および尾状葉の切除)にて腫瘤を一塊に切除した.開腹時肝周囲のリンパ管が著明に拡張していたが,術中腫瘍の血行遮断によって拡張が消退した.病理所見は中心瘢痕を有する典型的なFocal nodular hyperplasiaであった.本症は画像診断上肝細胞癌に極めて類似し鑑別が困難であるので,正常肝に発生した腫瘤性病変の診断に際しては,常に本症を念頭に置いて対処する必要がある.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.30.358