ポリウレタン製ペーシングリードの被覆損傷についての実験的考察

われわれの施設で植え込んだ恒久的ペースメーカー植込み症例の合併症の問題について検討した. 1例を除きすべてポリウレタン被覆リードで, しかも限定された品番のリード被覆損傷による合併症であった. 被覆損傷が生じたリードの表面は蛍光色素で染色され, 走査型電子顕微鏡では内壁表面は平滑であるが, 外壁表面に亀裂を認めた. この損傷を起こしたリードの横断面で光弾性検査をすると, リード壁表面に紋様を認め, 残留応力の存在を示唆する所見であった. これは製造過程で内壁に圧縮応力が, 外壁に引張り応力が残ったもので, この状態に植込み後の屈曲, 引張り, 表面の結紮等の外力が加えられ, 残留応力に加算され...

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Published in人工臓器 Vol. 19; no. 4; pp. 1427 - 1431
Main Authors 尾上, 雅彦, 森, 渥視, 渡田, 正二, 白石, 昭一郎, 田畑, 良宏, 松野, 修一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本人工臓器学会 1990
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ISSN0300-0818
1883-6097
DOI10.11392/jsao1972.19.1427

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Summary:われわれの施設で植え込んだ恒久的ペースメーカー植込み症例の合併症の問題について検討した. 1例を除きすべてポリウレタン被覆リードで, しかも限定された品番のリード被覆損傷による合併症であった. 被覆損傷が生じたリードの表面は蛍光色素で染色され, 走査型電子顕微鏡では内壁表面は平滑であるが, 外壁表面に亀裂を認めた. この損傷を起こしたリードの横断面で光弾性検査をすると, リード壁表面に紋様を認め, 残留応力の存在を示唆する所見であった. これは製造過程で内壁に圧縮応力が, 外壁に引張り応力が残ったもので, この状態に植込み後の屈曲, 引張り, 表面の結紮等の外力が加えられ, 残留応力に加算され亀裂が生じたと推測された. これは同じようなシリコン樹脂リードには見られないことから, 製造上の問題とともに, 材質そのものにも問題があることが示唆された. ジェネレータ交換等に際しては, 表面の蛍光染色などにより亀裂をきたしていないか注意を払う必要があると考えられた.
ISSN:0300-0818
1883-6097
DOI:10.11392/jsao1972.19.1427