慢性アルコール投与のラット肝ヘム代謝に及ぼす影響

慢性エタノール投与のラット肝におけるヘム代謝について検討した.ウイスター系雄ラットをエタノール含有液体飼料で5週間飼育し,一昼夜絶食後,断頭屠殺し,肝を摘出し実験に供した.慢性エタノール投与により約19%の肝腫大がみられた.肝ミトコンドリア蛋白量は両群間で差はなかったが,肝ミクロソーム蛋白はエタノール群で軽度増加した.肝ミクロソーム中のチトクロームP-450 (P-450)は著明に,チトクロームb5 (b5),ヘム量は軽度エタノール群で増加した.肝ミトコンドリア中のδ-aminolevulinic acid synthase (ALA-S)活性はエタノール群で著明に増加し,ミクロソーム中のhe...

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Published in肝臓 Vol. 30; no. 3; pp. 315 - 319
Main Authors 奥野, 府夫, 荒井, 正夫, 筋田, 和文, 平野, 芳昭, 江藤, 澄哉, 石井, 裕正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1989
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Summary:慢性エタノール投与のラット肝におけるヘム代謝について検討した.ウイスター系雄ラットをエタノール含有液体飼料で5週間飼育し,一昼夜絶食後,断頭屠殺し,肝を摘出し実験に供した.慢性エタノール投与により約19%の肝腫大がみられた.肝ミトコンドリア蛋白量は両群間で差はなかったが,肝ミクロソーム蛋白はエタノール群で軽度増加した.肝ミクロソーム中のチトクロームP-450 (P-450)は著明に,チトクロームb5 (b5),ヘム量は軽度エタノール群で増加した.肝ミトコンドリア中のδ-aminolevulinic acid synthase (ALA-S)活性はエタノール群で著明に増加し,ミクロソーム中のheme oxygenase (HO)活性は軽度増加した.以上のことより,慢性エタノール投与により肝臓中の最大のヘム蛋白であるP-450が増加し,ヘムの需要が増したために,ALA-S活性が誘導されたものと考えられた.また,ALA-S活性増加によるヘムの過剰供給に対処するために,HO活性が軽度ながら誘導され,ヘム量の抑制を行っているものと推測された.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.30.315