気管狭窄症状で発見した心膜嚢胞の1治験例

夜間臥床時の呼吸困難を主訴に来院し, 診断の機会を得た心膜嚢胞の1例を経験した.症例は57歳, 男性.約1ヵ月前から出現した夜間臥床時の喘息様呼吸困難の訴えで撮影した胸部X線像で, 上縦隔の腫瘤陰影ならびに気管狭窄所見を認めた.CTscanやMRIで右上縦隔気管傍に, 気管を左方へ強く圧排する嚢胞性腫瘤を認め, また右総頸動脈や腕頭動脈, 上大静脈もそれぞれ圧排偏位を認めた.手術は腫瘍が大動脈弓直上で各分枝や上大静脈を大きく圧排することから, 胸骨正中切開でアプローチし, 右半側襟状切開を加えた.腫瘍は上縁が甲状腺下極, 右縁は右総頸動脈および腕頭動脈下縁は大動脈弓部, そして左縁は気管右側壁...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 7; no. 4; pp. 483 - 488
Main Authors 成沢, 隆, 高場, 利博, 小林, 聡, 門倉, 光隆, 山本, 滋, 野中, 誠, 谷尾, 昇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 1993
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.7.483

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Summary:夜間臥床時の呼吸困難を主訴に来院し, 診断の機会を得た心膜嚢胞の1例を経験した.症例は57歳, 男性.約1ヵ月前から出現した夜間臥床時の喘息様呼吸困難の訴えで撮影した胸部X線像で, 上縦隔の腫瘤陰影ならびに気管狭窄所見を認めた.CTscanやMRIで右上縦隔気管傍に, 気管を左方へ強く圧排する嚢胞性腫瘤を認め, また右総頸動脈や腕頭動脈, 上大静脈もそれぞれ圧排偏位を認めた.手術は腫瘍が大動脈弓直上で各分枝や上大静脈を大きく圧排することから, 胸骨正中切開でアプローチし, 右半側襟状切開を加えた.腫瘍は上縁が甲状腺下極, 右縁は右総頸動脈および腕頭動脈下縁は大動脈弓部, そして左縁は気管右側壁に囲まれた長径7cmの嚢胞性腫瘍であった.術後病理組織学的に心膜嚢胞と診断した.摘出後気管狭窄部は速やかにほぼ原形に復帰し, また1秒率は術前28%から術後は87%へ著明に改善した.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.7.483