片肺換気と低酸素性肺血管収縮

わが国で平成8年から9年にかけての1年間に,胸部外科手術の68%に片肺換気(OLV)が施行され,必須のテクニックとなった.肺分離には72%で左用ダブルルーメンチューブ(DLT)が使用されている.正確なDLTの位置決めが最も重要で,気管支ファイバースコープは必須である.OLV中のチューブ位置ずれによる換気不全が最も多い合併症で,気管損傷,肺水腫など重篤なものも発生する.OLV中の肺膨張の必要性についてはさらに虚血-再灌流肺傷害の観点から検討する必要がある.吸入麻酔薬や血管拡張剤は本質的にはHPVを抑制し,OLV中の低酸素血症の原因となるが,種々の拮抗作用が働くため,低濃度ならば臨床的に問題はない...

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Published in日本臨床麻酔学会誌 Vol. 18; no. 6; pp. 561 - 569
Main Authors 石部, 裕一, 広沢, 寿一, 山崎, 和雅, 堀, 真也, 上田, 敬一郎, 上田, 真由美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床麻酔学会 1998
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ISSN0285-4945
1349-9149
DOI10.2199/jjsca.18.561

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Summary:わが国で平成8年から9年にかけての1年間に,胸部外科手術の68%に片肺換気(OLV)が施行され,必須のテクニックとなった.肺分離には72%で左用ダブルルーメンチューブ(DLT)が使用されている.正確なDLTの位置決めが最も重要で,気管支ファイバースコープは必須である.OLV中のチューブ位置ずれによる換気不全が最も多い合併症で,気管損傷,肺水腫など重篤なものも発生する.OLV中の肺膨張の必要性についてはさらに虚血-再灌流肺傷害の観点から検討する必要がある.吸入麻酔薬や血管拡張剤は本質的にはHPVを抑制し,OLV中の低酸素血症の原因となるが,種々の拮抗作用が働くため,低濃度ならば臨床的に問題はない.OLVは安全域の狭い麻酔管理法であるので肺生理学と臨床手技を修得し,個々の症例について危険性と利便性を検討のうえ慎重に実施すべきである.
ISSN:0285-4945
1349-9149
DOI:10.2199/jjsca.18.561