腹腔内出血で発症するも集学的治療で約8年生存した肝細胞癌の1例

患者は49歳男性で,腹部膨満感を主訴に1984年5月11日に入院した.腹部超音波検査にて,肝右葉の表面に突出する径4cmの腫瘤と大量の腹水およびその中に浮遊する点状高エコーを認め,肝細胞癌の破裂による腹腔内出血を疑った.腹腔穿刺にて血性腹水を確認した後,止血と肝腫瘍の治療を目的に緊急血管栓塞術を行った.治療後のCTでは腫瘍の完全壊死が示唆され,2ヵ月後には退院となったが,6ヵ月後に肝左葉に新たな結節が出現し,再び血管栓塞療法を行った.その2年後より,次々に腫瘍の再発を認めたが,化学栓塞療法(計3回)や経皮的エタノール注入療法(計6回)などで7年10ヵ月の生存が得られた.剖検ではほとんどの腫瘍は...

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Published in肝臓 Vol. 35; no. 6; pp. 441 - 447
Main Authors 堀口, 祐爾, 佐々木, 国夫, 三浦, 誠司, 竹内, 文康, 今井, 英夫, 伊藤, 圓, 鈴木, 智博, 小川, 弘恒, 伊藤, 久史, 世古口, 凡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1994
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.35.441

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Summary:患者は49歳男性で,腹部膨満感を主訴に1984年5月11日に入院した.腹部超音波検査にて,肝右葉の表面に突出する径4cmの腫瘤と大量の腹水およびその中に浮遊する点状高エコーを認め,肝細胞癌の破裂による腹腔内出血を疑った.腹腔穿刺にて血性腹水を確認した後,止血と肝腫瘍の治療を目的に緊急血管栓塞術を行った.治療後のCTでは腫瘍の完全壊死が示唆され,2ヵ月後には退院となったが,6ヵ月後に肝左葉に新たな結節が出現し,再び血管栓塞療法を行った.その2年後より,次々に腫瘍の再発を認めたが,化学栓塞療法(計3回)や経皮的エタノール注入療法(計6回)などで7年10ヵ月の生存が得られた.剖検ではほとんどの腫瘍は壊死に陥っており,尾状葉に発生した腫瘍よりの出血とそれに伴う肝不全が死因と思われた.腹腔内出血で発症する肝細胞癌の予後は極めて不良とされているが,本例では集学的治療で約8年の生存が得られた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.35.441