内面非透水処理により治癒促進効果を高めた人工血管

多孔質人工血管の治癒性を、埋入の場合及びシリコーンフィルムを内面被覆し血流の影響を遮断した場合において比較した。その結果、移植初期の基材内への炎症性細胞浸潤は埋入の場合よりも遅く、シリコーンフィルムの内面被覆により基材内への組織侵入性が改善されることがわかった。多孔質基材内に滞留する創傷液と血中液性成分との相互作用が考えられることから、組織培養により調べた結果、創傷液-血清混合培地中で血清比率の高い場合ほど線維芽細胞の増殖性が低く、また創傷液に起因する線維芽細胞走化性が血清によって阻害されることがわかった。以上より、吸収性材料の内面被覆により、移植初期の外側からの組織侵入を安定に促進し、長期的...

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Published in人工臓器 Vol. 19; no. 3; pp. 1279 - 1282
Main Authors 松本, 淳, 井川, 哲, 片倉, 健男, 西原, 勝紀, 野一色, 泰晴, 小山田, 香
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本人工臓器学会 1990
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ISSN0300-0818
1883-6097
DOI10.11392/jsao1972.19.1279

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Summary:多孔質人工血管の治癒性を、埋入の場合及びシリコーンフィルムを内面被覆し血流の影響を遮断した場合において比較した。その結果、移植初期の基材内への炎症性細胞浸潤は埋入の場合よりも遅く、シリコーンフィルムの内面被覆により基材内への組織侵入性が改善されることがわかった。多孔質基材内に滞留する創傷液と血中液性成分との相互作用が考えられることから、組織培養により調べた結果、創傷液-血清混合培地中で血清比率の高い場合ほど線維芽細胞の増殖性が低く、また創傷液に起因する線維芽細胞走化性が血清によって阻害されることがわかった。以上より、吸収性材料の内面被覆により、移植初期の外側からの組織侵入を安定に促進し、長期的には被覆材の分解吸収により基材内外面が連通し安定開存の可能な人工血管を作製できると考える。
ISSN:0300-0818
1883-6097
DOI:10.11392/jsao1972.19.1279