原発性ヘモクロマトーシスに合併したgranulocyte-colony stimulating factor産生肝細胞癌の1例

症例は71歳,男性.右側腹部痛と白血球増多を伴う発熱を主訴に入院となった.画像検査上,肝右葉に約5 cm大の膿瘍を示唆する所見があったため,抗生剤に加えて経皮経肝穿刺ドレナージを行ったが治療に抵抗して全身状態は急速に悪化した.緊急的に診断的開腹術を行ったところ,肝右葉(S5~8)に直径5 cm大の腫瘍と,肝全体に無数の小転移結節がみられた.術中病理検査では好中球浸潤を伴う低分化型肝細胞癌の診断であった. G-CSF産生腫瘍を疑って術後に測定した血清G-CSF濃度は139pg/mlと高値で,またG-CSF免疫組織化学染色法では腫瘍内に多数のG-CSF陽性細胞が確認された.患者は術後も症状が増悪,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 64; no. 1; pp. 169 - 174
Main Authors 古田, 一徳, 柿田, 章, 板橋, 浩一, 島田, 謙, 高橋, 毅, 星野, 弘樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.01.2003
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.64.169

Cover

More Information
Summary:症例は71歳,男性.右側腹部痛と白血球増多を伴う発熱を主訴に入院となった.画像検査上,肝右葉に約5 cm大の膿瘍を示唆する所見があったため,抗生剤に加えて経皮経肝穿刺ドレナージを行ったが治療に抵抗して全身状態は急速に悪化した.緊急的に診断的開腹術を行ったところ,肝右葉(S5~8)に直径5 cm大の腫瘍と,肝全体に無数の小転移結節がみられた.術中病理検査では好中球浸潤を伴う低分化型肝細胞癌の診断であった. G-CSF産生腫瘍を疑って術後に測定した血清G-CSF濃度は139pg/mlと高値で,またG-CSF免疫組織化学染色法では腫瘍内に多数のG-CSF陽性細胞が確認された.患者は術後も症状が増悪,第13病日目に肝不全のため死亡した.文献的にはG-CSF産生肝細胞癌は極めて稀で悪性度も高く,現在でも有効な治療手段の報告はみられない.今後の症例の蓄積と早急な診断・治療法の確立が望まれる.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.64.169