肝細胞癌に対するリピオドール併用肝動脈塞栓術による 5年以上生存例の検討

1984年1月以降リピオドール(以下Lp)併用肝動脈塞栓術(TAE)を施行後保存的療法を行い,1991年1月現在生死にかかわらず5年以上経過した肝細胞癌55症例中,5年以上生存した8例(15%)について,腫瘍型(結節型),Vp因子(Vp1以内)をそろえた2年以内の早期死亡例17例と対比検討した.背景因子,腫瘍因子の比較ではAFP値のみが早期死亡例で有意に陽性であった.治療因子では,5年生存例で平均TAE間隔が長く,TAE効果の持続が認められた.TAE直後の写真による腫瘍内部のLpの停滞状態を検討すると,5年生存例では均一で無構造な停滞が多く,早期死亡例では腫瘍血管等を反映する不均一な停滞が多っ...

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Published in肝臓 Vol. 33; no. 7; pp. 541 - 547
Main Authors 井上, 敦雄, 井上, 悦男, 春日, 井博志, 藤田, 眞, 児島, 淳之介, 吉岡, 寛康, 黒田, 知純
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1992
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.33.541

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Summary:1984年1月以降リピオドール(以下Lp)併用肝動脈塞栓術(TAE)を施行後保存的療法を行い,1991年1月現在生死にかかわらず5年以上経過した肝細胞癌55症例中,5年以上生存した8例(15%)について,腫瘍型(結節型),Vp因子(Vp1以内)をそろえた2年以内の早期死亡例17例と対比検討した.背景因子,腫瘍因子の比較ではAFP値のみが早期死亡例で有意に陽性であった.治療因子では,5年生存例で平均TAE間隔が長く,TAE効果の持続が認められた.TAE直後の写真による腫瘍内部のLpの停滞状態を検討すると,5年生存例では均一で無構造な停滞が多く,早期死亡例では腫瘍血管等を反映する不均一な停滞が多った.以上よりLp-TAEによる長期生存例の特徴を結節型,Vp1以内の範囲で検討すると,AFP値と腫瘍内Lp停滞状態が予後判定に重要であり,1回あたりのTAE効果の持続した例が長期予後を得ていた.TAE効果の的確な判定による再TAE時期の選択が重要と考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.33.541