低血糖発作をきたし,肝に肉芽腫様病変を特徴とする浸潤像を呈した皮膚T細胞性リンパ腫の1例

症例は64歳,男性.1989年10月低血糖による異常行動を主訴として入院した.理学的所見では前胸部,後頭部に皮疹がみられ肝脾腫を認めた.画像診断では肝・脾内に腫瘤性病変は見られなかったが,腹腔鏡検査では肝表面に地図状の白斑が認められ,組織学的には門脈域を中心に肉芽腫様病変の形成を特徴とする,異型性を有する小型リンパ球浸潤からなる病変が多発し,免疫染色・電顕所見も併せてT細胞性リンパ腫と診断した.皮疹からの生検組織でも同様の所見がみられ,皮膚T細胞性リンパ腫(small cerebriform cell type)と診断した.血清学的に抗インスリン受容体抗体が陽性を示し,低血糖は,paraneo...

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Published in肝臓 Vol. 36; no. 9; pp. 547 - 552
Main Authors 磯部, 智明, 大西, 勇人, 祖父江, 吉助, 塚田, 勝比古, 東, 克謙, 山田, 潤一, 埜村, 智之, 中尾, 春寿, 赤地, 和範, 星野, 信, 武内, 俊彦, 中村, 栄男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.09.1995
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Summary:症例は64歳,男性.1989年10月低血糖による異常行動を主訴として入院した.理学的所見では前胸部,後頭部に皮疹がみられ肝脾腫を認めた.画像診断では肝・脾内に腫瘤性病変は見られなかったが,腹腔鏡検査では肝表面に地図状の白斑が認められ,組織学的には門脈域を中心に肉芽腫様病変の形成を特徴とする,異型性を有する小型リンパ球浸潤からなる病変が多発し,免疫染色・電顕所見も併せてT細胞性リンパ腫と診断した.皮疹からの生検組織でも同様の所見がみられ,皮膚T細胞性リンパ腫(small cerebriform cell type)と診断した.血清学的に抗インスリン受容体抗体が陽性を示し,低血糖は,paraneoplastic syndromeと考えられた.本症例は1975年に紅皮症と診断されたが,当時の皮膚生検組織にもlymphoma cellが認められ,15年間subclinicalな状態で経過したものと考えられた.皮膚T細胞性リンパ腫に肝肉芽腫様病変を合併した例は稀であり,さらに肝浸潤により低血糖を招来した例は,本邦では文献的に検索し得た範囲内では第1例目と考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.36.547