術式に苦慮した感染性胸腹部大動脈瘤破裂の1例

感染性胸腹部大動脈瘤の破裂に対し,緊急手術を施行し,感染巣で血行再建を行い治癒することができた症例を経験した. 症例は糖尿病を有する76歳男性.上腹部の有痛性拍動性腫瘤を主訴に来院.腹部CT,血管造影検査,強い炎症所見より感染性胸腹部大動脈瘤破裂と診断し,緊急手術を施行した.後腹膜を開くと,動脈瘤周囲に血腫を認め,約3cmの嚢状動脈瘤が腹腔動脈根部に巻き込むように存在していた.膿瘍は認めなかった.可及的に動脈瘤壁,周囲組織を切除し,解剖学的血行再建術を試みた.高齢であり,手術侵襲を考慮し,内臓分枝は感染巣で再建したが,非解剖学的血行再建術で手術を終了した.動脈壁細菌培養では黄色ブドウ球菌が検出...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 59; no. 3; pp. 642 - 646
Main Authors 生田, 宏次, 八木, 崇人, 水上, 泰延, 長嶋, 孝昌, 近松, 英二, 大平, 周作
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.03.1998
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.59.642

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Summary:感染性胸腹部大動脈瘤の破裂に対し,緊急手術を施行し,感染巣で血行再建を行い治癒することができた症例を経験した. 症例は糖尿病を有する76歳男性.上腹部の有痛性拍動性腫瘤を主訴に来院.腹部CT,血管造影検査,強い炎症所見より感染性胸腹部大動脈瘤破裂と診断し,緊急手術を施行した.後腹膜を開くと,動脈瘤周囲に血腫を認め,約3cmの嚢状動脈瘤が腹腔動脈根部に巻き込むように存在していた.膿瘍は認めなかった.可及的に動脈瘤壁,周囲組織を切除し,解剖学的血行再建術を試みた.高齢であり,手術侵襲を考慮し,内臓分枝は感染巣で再建したが,非解剖学的血行再建術で手術を終了した.動脈壁細菌培養では黄色ブドウ球菌が検出された.術後は強力な抗生剤の投与により,順調に経過し,約3カ月後独歩退院となった.現在も症状なく経過している.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.59.642