肝内結石様所見を呈した肝嚢胞腺腫の1例

症例は69歳,女性.1988年12月,狭心症にて他科入院時,腹部超音波検査にて肝左葉胆管拡張を指摘され,当科に入院.超音波検査では,その他に左葉に腫瘍性病変を認めた.境界不明瞭で内部は粗造であり,胆管癌を考えた.MRIでは実質成分を含む嚢胞性病変を認め,肝嚢胞腺腫を疑ったが,内視鏡的逆行性胆管造影検査では,左肝内胆管内に結石を思わせる陰影欠損を伴う胆管の拡張があり,またCTでは,嚢胞が拡張胆管様に思われ,術前診断が困難であった.手術にて肝嚢胞腺腫と診断.肝嚢胞腺腫と胎嚢胞腺癌は,比較的まれな疾患であり,その診断には画像診断が重要な役割を果たす.CT,超音波検査を有用とする報告が多いが,近年進歩...

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Published in肝臓 Vol. 32; no. 2; pp. 186 - 190
Main Authors 濱戸, 教行, 森安, 史典, 小野, 成樹, 山下, 幸孝, 梶村, 幸三, 小林, 展章, 木村, 達, 小澤, 和恵, 染田, 仁, 大熊, 稔, 鍋島, 紀滋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1991
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.32.186

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Summary:症例は69歳,女性.1988年12月,狭心症にて他科入院時,腹部超音波検査にて肝左葉胆管拡張を指摘され,当科に入院.超音波検査では,その他に左葉に腫瘍性病変を認めた.境界不明瞭で内部は粗造であり,胆管癌を考えた.MRIでは実質成分を含む嚢胞性病変を認め,肝嚢胞腺腫を疑ったが,内視鏡的逆行性胆管造影検査では,左肝内胆管内に結石を思わせる陰影欠損を伴う胆管の拡張があり,またCTでは,嚢胞が拡張胆管様に思われ,術前診断が困難であった.手術にて肝嚢胞腺腫と診断.肝嚢胞腺腫と胎嚢胞腺癌は,比較的まれな疾患であり,その診断には画像診断が重要な役割を果たす.CT,超音波検査を有用とする報告が多いが,近年進歩してきたMRIは,本例のようにその診断に有用である.嚢胞腺腫と嚢胞腺癌は肉眼的鑑別は困難で,嚢胞腺腫の経過観察中に癌化したという報告もあり,嚢胞腺腫の治療としては腫瘍の完全な摘出が望まれる.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.32.186