腹壁に穿通した大腸アメーバ症の1例

大腸アメーバ症の1例を経験したので報告する.患者は61歳の男性で腹痛,下痢を主訴として来院した.海外渡航歴はない.回盲部周囲膿瘍を強く疑い緊急手術を行った.開腹すると盲腸は腫瘤状に腫大しており,術中の大腸内視鏡では大腸のほぼ全域に多数の潰瘍を形成していた. S状結腸では腹壁に穿通していた.手術は腫瘤状の部位を含めて大腸の約3/4の切除を行った.術後,縫合不全やDICなど合併症に難渋したが幸い救命することができた. 大腸アメーバ症は本邦では法定伝染病であり,戦中,戦後に流行をみたが1978年には年間10例以下の発症をみるのみとなった.しかし男性同性愛者の性行為感染症としての増加,海外渡航者の増加...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 61; no. 1; pp. 126 - 129
Main Authors 岡, 淳夫, 角, 賢一, 高橋, 節, 衣笠, 陽一, 浜副, 隆一, 村田, 陽子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.01.2000
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.61.126

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Summary:大腸アメーバ症の1例を経験したので報告する.患者は61歳の男性で腹痛,下痢を主訴として来院した.海外渡航歴はない.回盲部周囲膿瘍を強く疑い緊急手術を行った.開腹すると盲腸は腫瘤状に腫大しており,術中の大腸内視鏡では大腸のほぼ全域に多数の潰瘍を形成していた. S状結腸では腹壁に穿通していた.手術は腫瘤状の部位を含めて大腸の約3/4の切除を行った.術後,縫合不全やDICなど合併症に難渋したが幸い救命することができた. 大腸アメーバ症は本邦では法定伝染病であり,戦中,戦後に流行をみたが1978年には年間10例以下の発症をみるのみとなった.しかし男性同性愛者の性行為感染症としての増加,海外渡航者の増加などにより近年増加傾向にある.腸管穿孔などを合併し,手術が必要となった症例では死亡率が高い.早期診断,早期治療には日常の臨床においても本症も念頭におく必要がある.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.61.126