特発性弓部大動脈破裂の1例

きわめて希な特発性弓部大動脈破裂症例を経験したので報告する.症例は55歳,女性.突然の胸痛を訴え他院を受診した.心タンポナーデの診断で当院転送となった.来院時血圧70mmHgのショック状態であった.CTにて心タンポナーデ,上行・弓部大動脈周囲に血腫を認めたが,大動脈の解離所見は認められなかった.大動脈破裂の診断で緊急手術を施行した.弓部前面に裂孔を認め,循環停止下に縫合閉鎖した.正確な破裂孔の同定に術中経食道超音波検査が有用であった.上行・弓部大動脈には外膜血腫のみで解離の所見はなく,病理診断においても同様の結果であった.術後経過は良好で16病日に退院した.本症はきわめて希な疾患で,確定診断が...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 33; no. 4; pp. 270 - 273
Main Authors 高場, 利博, 松尾, 義昭, 尾頭, 厚, 丸田, 一人, 川田, 忠典, 饗場, 正宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.07.2004
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.33.270

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Summary:きわめて希な特発性弓部大動脈破裂症例を経験したので報告する.症例は55歳,女性.突然の胸痛を訴え他院を受診した.心タンポナーデの診断で当院転送となった.来院時血圧70mmHgのショック状態であった.CTにて心タンポナーデ,上行・弓部大動脈周囲に血腫を認めたが,大動脈の解離所見は認められなかった.大動脈破裂の診断で緊急手術を施行した.弓部前面に裂孔を認め,循環停止下に縫合閉鎖した.正確な破裂孔の同定に術中経食道超音波検査が有用であった.上行・弓部大動脈には外膜血腫のみで解離の所見はなく,病理診断においても同様の結果であった.術後経過は良好で16病日に退院した.本症はきわめて希な疾患で,確定診断が困難であり予後不良である.外傷や大動脈瘤がなくても,CTでの迅速かつ詳細な検査において本症を疑い,積極的な外科治療が必要である.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.33.270