A型肝炎を合併後,HBs抗原が持続陰性化したB型慢性肝炎の1例

B型慢性肝炎の経過中,A型肝炎合併約1年後にHBs抗原が陰性化した例を経験したので報告する.症例は35歳男性で昭和52年1月入院.HBs抗原,HBe抗原が共に陽性で腹腔鏡・肝生検にて慢性活動性肝炎と診断した.プレドニゾロンの少量長期投与を受け肝機能はほぼ正常化し,昭和54年8月よりはHBe抗原も陰性化し,また昭和56年3月の肝生検では慢性非活動性肝炎の像を呈していた.プレドニゾロンを中止とし,経過観察していたところ,昭和57年2月A型肝炎を合併,安静のみで約1ヵ月後に軽快した.その後同年10月にはHBe抗体が出現し,さらに昭和58年2月からはHBs抗原が陰性化し昭和61年2月までの3年間陰性化...

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Published in肝臓 Vol. 28; no. 2; pp. 231 - 235
Main Authors 桜井, 幸弘, 福岡, 賢一, 白井, 孝之, 池上, 文詔, 伊藤, 慎芳, 多賀須, 幸男, 打越, 敏之, 土谷, 春仁, 石河, 利隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1987
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.28.231

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Summary:B型慢性肝炎の経過中,A型肝炎合併約1年後にHBs抗原が陰性化した例を経験したので報告する.症例は35歳男性で昭和52年1月入院.HBs抗原,HBe抗原が共に陽性で腹腔鏡・肝生検にて慢性活動性肝炎と診断した.プレドニゾロンの少量長期投与を受け肝機能はほぼ正常化し,昭和54年8月よりはHBe抗原も陰性化し,また昭和56年3月の肝生検では慢性非活動性肝炎の像を呈していた.プレドニゾロンを中止とし,経過観察していたところ,昭和57年2月A型肝炎を合併,安静のみで約1ヵ月後に軽快した.その後同年10月にはHBe抗体が出現し,さらに昭和58年2月からはHBs抗原が陰性化し昭和61年2月までの3年間陰性化は継続している.また一般肝機能検査は昭和57年3月以来,ほとんど異常を認めていない.本症例では,HBVキャリアーにおいてHBs抗原の陰性化にHAVの重感染が何らかの影響を及ぼした可能性が推測され,極めて興味深い.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.28.231