動脈の選択的分解処理と血管壁細胞外マトリクスに関する基礎的研究

生体血管壁構成成分をもちいた人工血管や血管再建材料の基礎研究として、蟻酸あるいはトリプシン(それぞれコラーゲン線維、エラスチン線維を消化)処理が血管の組織構成要素に及ぼす効果について、病理組織的および走査電顕による検討を行った。 結果としては(1)蟻酸処理により血管外膜と中膜の膠原線維の欠如、弾性線維束のほぐれが見られた。血管壁は短時間処理では肥厚し、長時間処理すると菲薄化した。(2)トリプシン処理により、血管外膜には変化が少なく中膜と内膜では弾性線維の伸展、菲薄化と線維束の散らばりが見られた。(3)蟻酸がコラーゲンのみを、トリプシンがエラスチンのみを選択的に分解しているわけではなく、どちらの...

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Published in人工臓器 Vol. 27; no. 2; pp. 528 - 533
Main Authors 上田, 寛樹, 勝矢, 聡子, 山本, 恭通, 松本, 和也, 関根, 隆, 劉, 愉, 清谷, 哲也, 中村, 達雄, 升田, 利史郎, 清水, 慶彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本人工臓器学会 15.04.1998
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Summary:生体血管壁構成成分をもちいた人工血管や血管再建材料の基礎研究として、蟻酸あるいはトリプシン(それぞれコラーゲン線維、エラスチン線維を消化)処理が血管の組織構成要素に及ぼす効果について、病理組織的および走査電顕による検討を行った。 結果としては(1)蟻酸処理により血管外膜と中膜の膠原線維の欠如、弾性線維束のほぐれが見られた。血管壁は短時間処理では肥厚し、長時間処理すると菲薄化した。(2)トリプシン処理により、血管外膜には変化が少なく中膜と内膜では弾性線維の伸展、菲薄化と線維束の散らばりが見られた。(3)蟻酸がコラーゲンのみを、トリプシンがエラスチンのみを選択的に分解しているわけではなく、どちらの処理においても弾性線維の間隙のコラーゲンや蛋白質の広範囲にわたる分解と内皮細胞や平滑筋細胞の脱落、結合組織の除去が見られた。
ISSN:0300-0818
1883-6097
DOI:10.11392/jsao1972.27.528