担癌患者単球-マクロファージ系細胞の免疫調節機能

我々は,担癌患者の単球-マクロファージ系細胞(Mφ)の免疫調節機能にっいて検討するため,それより産生放出されるInterleukin-1 (IL-1)およびProstaglandin E (PGE)を定量するin vitroのassay系を作成した.このassay系を用いて,癌の進展に伴うMφ機能の変遷につき観察するとともに,活性化Mφの指標とされるMφ膜表面Ia抗原陽性率(Ia率)についても検討を加えた.その結果,健常人Mφは培養3日目でIL-1, PGE産生量およびIa率のpeakを示すことから,その活性化に伴い, IL-1とともにPGEも同時に放出されることが判明した.また,癌の進展に伴...

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Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 10; no. 4; pp. 368 - 375
Main Author 大鹿, 幸信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 1987
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ISSN0911-4300
1349-7413
DOI10.2177/jsci.10.368

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Summary:我々は,担癌患者の単球-マクロファージ系細胞(Mφ)の免疫調節機能にっいて検討するため,それより産生放出されるInterleukin-1 (IL-1)およびProstaglandin E (PGE)を定量するin vitroのassay系を作成した.このassay系を用いて,癌の進展に伴うMφ機能の変遷につき観察するとともに,活性化Mφの指標とされるMφ膜表面Ia抗原陽性率(Ia率)についても検討を加えた.その結果,健常人Mφは培養3日目でIL-1, PGE産生量およびIa率のpeakを示すことから,その活性化に伴い, IL-1とともにPGEも同時に放出されることが判明した.また,癌の進展に伴いIL-1産生量およびIa率は低下を示した.しかし, PGE産生量は初期癌症例では健常人に比較して,むしろ低下傾向を示し,進行癌症例では著明に上昇した.このことから,初期癌症例群MφのT cell活性化能は比較的保たれているが,進行癌症例群Mφのそれはきわめて低下していることが判明した.さらに,癌患者血清のMφ機能に及ぼす影響を観察するため,健常人Mφを進行癌患者血清にてpreincubationしたところ, IL-1産生量およびIa率の低下をきたし, PGE産生量はきわめて上昇した.このことから,癌患者血清中の免疫抑制因子がMφ膜表面のIa抗原の発現を抑制し,その機能障害を引き起こす機序が推察された. 以上の検討から,担癌患者の免疫不全状態の一面が明らかとなり,非特異的免疫療法を考える場合, MφのIL-1産生量の増加とともにPGE分泌の抑制も考慮すべきであると考えられた.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.10.368