開心術後に合併した非定型抗酸菌症の2例
開心術後における非定型抗酸菌症はまれな合併症の一つである.今回われわれは感染時期が近接し,Mycobacterium fortuitum(以下,M.fortuitum)が病原菌であった興味深い2症例を経験した.症例1は56歳,男性.僧帽弁閉鎖不全に対し僧帽弁形成術が施行された.第10病日から胸部正中創に蜂窩織炎が認められた.数日後に皮下膿瘍が形成された.第38病日にM.fortuitumが検出されたため,多剤併用療法が開始された.皮膚潰瘍,膿瘍は再発をくり返したが,15ヵ月後に創部感染は治癒した.症例2は26歳,男性.大動脈解離に対し大動脈人工血管置換術が施行された.術後経過は良好であったが第...
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Published in | 日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 34; no. 1; pp. 74 - 77 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
15.01.2005
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Subjects | |
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ISSN | 0285-1474 1883-4108 |
DOI | 10.4326/jjcvs.34.74 |
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Summary: | 開心術後における非定型抗酸菌症はまれな合併症の一つである.今回われわれは感染時期が近接し,Mycobacterium fortuitum(以下,M.fortuitum)が病原菌であった興味深い2症例を経験した.症例1は56歳,男性.僧帽弁閉鎖不全に対し僧帽弁形成術が施行された.第10病日から胸部正中創に蜂窩織炎が認められた.数日後に皮下膿瘍が形成された.第38病日にM.fortuitumが検出されたため,多剤併用療法が開始された.皮膚潰瘍,膿瘍は再発をくり返したが,15ヵ月後に創部感染は治癒した.症例2は26歳,男性.大動脈解離に対し大動脈人工血管置換術が施行された.術後経過は良好であったが第28病日より胸部正中創に発赤と膿瘍が認められた.第61病日にM.fortuitumが検出されたため,非定型抗酸菌症として治療が開始された.瘻孔拡大,深部に病巣が及んだため第67病日に有茎大網弁充填,植皮術が施行された.その後創部感染は治癒し,第137病日に退院となった.術後約1年,胸骨骨髄炎,縦隔洞炎の再燃は認められない.通常の抗生剤に抵抗性の創部感染,起炎菌不明の術後感染は非定型抗酸菌症の可能性を念頭において早期診断に努める必要があると思われた. |
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ISSN: | 0285-1474 1883-4108 |
DOI: | 10.4326/jjcvs.34.74 |