南海トラフ沿岸の古津波堆積物の研究 その成果と課題

津波堆積物を使った南海トラフ沿岸での古地震・津波の研究は,過去6000年間にわたる津波の履歴解明に貢献してきた.それにより,100年~150年間隔で発生する“通常の”巨大地震以外に,より大きな地震が300~500年間隔で繰り返していると言う“ハイパー地震サイクル”仮説の提唱といったトピックもあった.このレビューでは,南海トラフ沿岸での津波堆積物研究について今後解決すべき2つのテーマを提案した.一つ目は,過去の地震の破壊域の正確な復元が改めて重要である.例えば,1707宝永地震以降は東海地震と南海地震がペアで存在するが,古い時代にはどちらか一方の記録しかないことが多い.歴史記録から漏れた地震がな...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in地質学雑誌 Vol. 123; no. 10; pp. 831 - 842
Main Authors 谷川, 晃一朗, 藤原, 治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本地質学会 15.10.2017
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0016-7630
1349-9963
DOI10.5575/geosoc.2017.0061

Cover

More Information
Summary:津波堆積物を使った南海トラフ沿岸での古地震・津波の研究は,過去6000年間にわたる津波の履歴解明に貢献してきた.それにより,100年~150年間隔で発生する“通常の”巨大地震以外に,より大きな地震が300~500年間隔で繰り返していると言う“ハイパー地震サイクル”仮説の提唱といったトピックもあった.このレビューでは,南海トラフ沿岸での津波堆積物研究について今後解決すべき2つのテーマを提案した.一つ目は,過去の地震の破壊域の正確な復元が改めて重要である.例えば,1707宝永地震以降は東海地震と南海地震がペアで存在するが,古い時代にはどちらか一方の記録しかないことが多い.歴史記録から漏れた地震がないかを地層記録から検証し地震履歴を補完することは,巨大地震の発生パターンを知るために重要である.もう一つは,古津波の規模(遡上高や遡上範囲)を定量化することである.これは“ハイパー地震サイクル”仮説の検証や,我々が備えるべき津波の規模を検討するために重要である.
ISSN:0016-7630
1349-9963
DOI:10.5575/geosoc.2017.0061