データ適応型分布に基づく多分岐樹木構造接近法

生存時間研究において,樹木構造接近法は患者の生存時間の予後因子を評価するための強力な手段である.既存の生存時間研究における樹木構造接近法のほとんどが2分岐で構成されているが,応答(生存時間)に対する予後因子を2分岐で単純に扱える場合は少ない.衛藤他(2007)は,予後因子の交互作用効果を(比較的)簡単なグラフィクスで表示できる多分岐型樹木構造接近法を提案している.この方法は,分岐基準にノンパラメトリック(検定)統計量を用いて構成されているが,データ省察から解釈までの手順に論理的な一貫性を保持するには,応答に何らかの潜在基礎分布を想定したほうが好ましい.本論文では,その潜在基礎分布にデータ適応型...

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Published in計算機統計学 Vol. 22; no. 1; pp. 3 - 21
Main Authors 下川, 敏雄, 後藤, 昌司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本計算機統計学会 2010
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Summary:生存時間研究において,樹木構造接近法は患者の生存時間の予後因子を評価するための強力な手段である.既存の生存時間研究における樹木構造接近法のほとんどが2分岐で構成されているが,応答(生存時間)に対する予後因子を2分岐で単純に扱える場合は少ない.衛藤他(2007)は,予後因子の交互作用効果を(比較的)簡単なグラフィクスで表示できる多分岐型樹木構造接近法を提案している.この方法は,分岐基準にノンパラメトリック(検定)統計量を用いて構成されているが,データ省察から解釈までの手順に論理的な一貫性を保持するには,応答に何らかの潜在基礎分布を想定したほうが好ましい.本論文では,その潜在基礎分布にデータ適応型分布,それもベキ正規分布を想定したもとで多分岐樹木構造接近法を構成する.その性能を,数個の文献事例およびシミュレーションにより評価した.その結果,既存のノンパラメトリック検定統計量に基づく多分岐樹木構造接近法と比肩し得る性能をもち,結果の解釈が容易であった.データの省察から予後因子の探索までを一貫して整合的に行うことができる点で,ここで提示したデータ適応型多分岐樹木構造接近法が推奨できる.
ISSN:0914-8930
2189-9789
DOI:10.20551/jscswabun.22.1_3