第15回臨床不整脈研究会 心サルコイドーシスのステロイド治療後,房室結節伝導改善に伴って通常型房室結節回帰性頻拍を呈した1症例

症例は59歳女性.労作時息切れで病院受診.左室壁運動低下,Ga心筋シンチ集積像,および心筋生検の類上皮細胞性肉芽腫所見より心サルコイドーシスと診断された.心不全薬物療法とともにステロイド内服を開始し,心不全コントロール良好となった.治療前,心電図上高度房室ブロックが認められたが,治療によってI度房室ブロックに改善した.しかし,同時期より発作性上室性頻拍が頻回に出現し,精査加療目的で電気生理検査を施行された.高位右房刺激では,AH時間のjump-up現象を伴わず頻拍が誘発されたが,頻拍時の所見から通常型房室結節性回帰頻拍と診断された.房室結節の速伝導路伝導が障害されている可能性を考慮し,房室伝導...

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Published in心臓 Vol. 35; no. Supplement4; pp. 97 - 103
Main Authors 松山, 斉久, 庭野, 慎一, 猪又, 孝元, 脇坂, 裕子, 斉藤, 淳子, 江口, 麻里子, 小島, 時昭, 湯本, 佳宏, 吉田, 徹, 原, 英幸, 和泉, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2003
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Summary:症例は59歳女性.労作時息切れで病院受診.左室壁運動低下,Ga心筋シンチ集積像,および心筋生検の類上皮細胞性肉芽腫所見より心サルコイドーシスと診断された.心不全薬物療法とともにステロイド内服を開始し,心不全コントロール良好となった.治療前,心電図上高度房室ブロックが認められたが,治療によってI度房室ブロックに改善した.しかし,同時期より発作性上室性頻拍が頻回に出現し,精査加療目的で電気生理検査を施行された.高位右房刺激では,AH時間のjump-up現象を伴わず頻拍が誘発されたが,頻拍時の所見から通常型房室結節性回帰頻拍と診断された.房室結節の速伝導路伝導が障害されている可能性を考慮し,房室伝導順行路の判別を行った.His束電位のAH時間は,房室結節近傍刺激で240msであったのに対し,後中隔刺激では205msと短縮した.本症例の房室順行伝導は遅伝導路が担っていると推定し,遅伝導路の焼灼を中止して薬剤で経過観察を行う方針とした.本症例は,ステロイド治療後の房室伝導改善に伴い通常型房室結節回帰性頻拍が生じやすい状況になったこと,房室順行伝導が遅伝導路と推測されるなど,特異な経過が認められ興味深い症例と考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.35.Supplement4_97