第13回臨床不整脈研究会 冠静脈内の近位部と遠位部にそれぞれ異なるメカニズムでdouble potentialが記録された左後中隔副伝導路症例

症例は69歳男性.心不全を伴うincessant型の発作性上室性頻拍(SVT)に対し,カテーテルアブレーション(RFCA)を施行した.心臓電気生理検査(EPS)にて頻拍は副伝導路を介した房室回帰頻拍(AVRT)であることが判明したが,室房伝導時間は通常のAVRTに比し延長していた.頻拍中あるいは心室頻回刺激中冠静脈洞内の近位部と遠位部にdouble potential(DP)を認めた.近位部のDP(DPp1, DP-p 2)の間隔は,頻拍中あるいは心室刺激中に変化し,減衰伝導特性を示した.遠位部のDP(DP-d 1,DP-d 2)はその両者の間で極性が異なっていた.最短室房(V-A)間隔は左後...

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Published in心臓 Vol. 33; no. Supplement5; pp. 32 - 37
Main Authors 三橋, 武司, 高橋, 将文, 橋本, 徹, 海老沢, 勝人, 島田, 和幸, 平原, 大志, 鶴谷, 善夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2001
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Summary:症例は69歳男性.心不全を伴うincessant型の発作性上室性頻拍(SVT)に対し,カテーテルアブレーション(RFCA)を施行した.心臓電気生理検査(EPS)にて頻拍は副伝導路を介した房室回帰頻拍(AVRT)であることが判明したが,室房伝導時間は通常のAVRTに比し延長していた.頻拍中あるいは心室頻回刺激中冠静脈洞内の近位部と遠位部にdouble potential(DP)を認めた.近位部のDP(DPp1, DP-p 2)の間隔は,頻拍中あるいは心室刺激中に変化し,減衰伝導特性を示した.遠位部のDP(DP-d 1,DP-d 2)はその両者の間で極性が異なっていた.最短室房(V-A)間隔は左後中隔で得られたが84msecと通常のAVRTに比し延長していた.同部位の通電でRFCAに成功し,室房(VA)伝導は完全に消失した.RFCA成功後冠静脈洞近位部から行ったペーシングにおいて遠位部では頻拍中と同様の極性のDPがDP-d 1, DP-d 2の順で記録されたが,近位部ではDP-p2,DP-p1と頻拍中あるいは心室刺激時とは逆の順序で記録された.以上より冠静脈近位部で得られたDP-p1,DP-p2はそれぞれ心房筋と冠静脈に付着した心筋より生じ,かつ両者の間に減衰伝導特性を示す副伝導路ないし心筋が存在するものと思われた.一方遠位部のDPは副伝導路とbystanderに存在し,左心耳の興奮などに由来するものと思われた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.33.Supplement5_32