アベマシクリブ投与中に重篤な間質性肺疾患をきたしたが救命しえた1例

CDK4/6阻害剤であるアベマシクリブがホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌に対して使用できるようになり,無増悪生存期間が有意に延長し,予後の改善が認められている。しかし,一部の症例では薬剤性間質性肺疾患をきたすことがあり,時には重症化することもあるため注意が必要である。症例は75歳女性。ホルモン受容体陽性HER2陰性再発乳癌に対しアベマシクリブ+レトロゾール内服開始後11ヵ月目に,呼吸困難感が出現し当院に救急搬送された。来院時,PCO2:24.5mmHg,PO2:61.2mmHgでⅠ型呼吸不全をきたしており,CTでは両側肺野に牽引性気管支拡張を伴う広範なすりガラス影を認...

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Published in四国医学雑誌 Vol. 80; no. 3.4; pp. 121 - 124
Main Authors 笹, 聡一郎, 井上, 寛章, 鳥羽, 博明, 三崎, 万理子, 磯村, 祐太, 宮本, 直輝, 後藤, 正和, 滝沢, 宏光, 乾, 友浩, 行重, 佐和香
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 徳島医学会 2024
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ISSN0037-3699
2758-3279
DOI10.57444/shikokuactamedica.80.3.4_121

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Summary:CDK4/6阻害剤であるアベマシクリブがホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌に対して使用できるようになり,無増悪生存期間が有意に延長し,予後の改善が認められている。しかし,一部の症例では薬剤性間質性肺疾患をきたすことがあり,時には重症化することもあるため注意が必要である。症例は75歳女性。ホルモン受容体陽性HER2陰性再発乳癌に対しアベマシクリブ+レトロゾール内服開始後11ヵ月目に,呼吸困難感が出現し当院に救急搬送された。来院時,PCO2:24.5mmHg,PO2:61.2mmHgでⅠ型呼吸不全をきたしており,CTでは両側肺野に牽引性気管支拡張を伴う広範なすりガラス影を認めていた。薬剤性間質性肺疾患の診断で,人工呼吸管理下にステロイドパルス療法を行った。3度のステロイドパルスを行い症状は徐々に改善,在宅酸素療法を導入し自宅退院をすることができた。本症例では重篤な間質性肺疾患を発症したが,速やかに治療を開始することができ救命することができた。 CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブは,ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌に対して保険適用が認められている。CDK4/6阻害薬はホルモン受容体陽性HER2陰性再発乳癌の無増悪生存期間を有意に延長し,全生存期間の延長も報告されている1)。有害事象は一般的に管理が容易とされているが,時に重篤な間質性肺炎をきたすことが報告されている1)。2018年11月30日にわが国で発売以来,本剤に起因すると考えられる間質性肺疾患(Interstitial Lung Disease:ILD)が相次いで報告された2)。アベマシクリブが原因と考えられるILDの重症例を経験したので報告する。
ISSN:0037-3699
2758-3279
DOI:10.57444/shikokuactamedica.80.3.4_121