術前に甲状腺癌リンパ節転移との鑑別が困難であった頸部神経鞘腫の1例

症例は60歳代女性。7年前より徐々に増大する右頸部腫瘤と右甲状腺腫瘍を認めた。画像検査所見から甲状腺癌+頸部リンパ節転移の可能性が否定できなかったため,確定診断と根治治療を目的に,甲状腺右葉切除術+右頸部腫瘤切除術+D1uniを施行した。右甲状腺腫瘍はfollicular adenoma,頸部腫瘤は神経鞘腫と診断された。 神経鞘腫は神経鞘のSchwann細胞から発生する良性腫瘍で,頭頸部全体に発生頻度が高く,25~45%が頭頸部に発生する。迷走神経,腕神経叢,交感神経の刺激症状を呈することが特徴であるが,本症例のように無痛性の頸部腫瘤のみを呈する例も多い。穿刺吸引細胞診で診断できる症例もあるが...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in四国医学雑誌 Vol. 79; no. 1.2; pp. 109 - 116
Main Authors 倉石, 佳奈, 法村, 尚子, 三浦, 一真, 藤本, 啓介, 監崎, 孝一郎, 澤田, 徹, 久保, 尊子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 徳島医学会 2023
Online AccessGet full text
ISSN0037-3699
2758-3279
DOI10.57444/shikokuactamedica.79.1.2_109

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は60歳代女性。7年前より徐々に増大する右頸部腫瘤と右甲状腺腫瘍を認めた。画像検査所見から甲状腺癌+頸部リンパ節転移の可能性が否定できなかったため,確定診断と根治治療を目的に,甲状腺右葉切除術+右頸部腫瘤切除術+D1uniを施行した。右甲状腺腫瘍はfollicular adenoma,頸部腫瘤は神経鞘腫と診断された。 神経鞘腫は神経鞘のSchwann細胞から発生する良性腫瘍で,頭頸部全体に発生頻度が高く,25~45%が頭頸部に発生する。迷走神経,腕神経叢,交感神経の刺激症状を呈することが特徴であるが,本症例のように無痛性の頸部腫瘤のみを呈する例も多い。穿刺吸引細胞診で診断できる症例もあるが,十分な検体が得られないことも多く,術前に診断される症例は約半数である。 前頸部腫瘤の鑑別診断は悪性リンパ腫,悪性腫瘍の頸部リンパ節転移,顎下腺腫瘍,結核性リンパ節転移などが挙げられる。本症例では,甲状腺癌の頸部リンパ節転移が鑑別に挙げられたが,組織学的検査では甲状腺,頸部腫瘤ともに悪性腫瘍は検出されず,甲状腺濾胞腺腫と頸部神経鞘腫が独立して発生した症例と考えられた。 頸部神経鞘腫と甲状腺腫瘍を合併し,術前に甲状腺癌リンパ節転移を疑われた症例を経験したため報告する。
ISSN:0037-3699
2758-3279
DOI:10.57444/shikokuactamedica.79.1.2_109