第16回心臓性急死研究会 血管穿刺の際に長時間の心停止を来した神経調節性失神の1例

症例は44歳男性.主訴は失神発作.現在まで2回,失神発作の既往あり,いずれも回復まで数十秒間を要し,うち一度は失神に伴い転倒,頭部外傷を起こしている. 外来で施行したホルター心電図で3.6秒の洞停止が記録されており,精査目的で入院となった. 入院後心臓電気生理学的検査(EPS)を施行.大腿静脈穿刺の際,気分不快を訴えた後に洞性徐脈となり,その後12秒以上持続する洞停止を来し失神に至った.硫酸アトロピンの静注および心臓マッサージにより洞調律に復し,その後意識も回復した.EPSを行ったが,オーバードライブ洞抑制試験による洞結節回復時間の延長は認めず,迷走神経過緊張によると考えられるA-H Wenc...

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Published in心臓 Vol. 36; no. Supplement3; pp. 5 - 10
Main Authors 佐々木, 玲聡, 中里, 祐二, 河野, 安伸, 飯田, 洋司, 戸叶, 隆司, 安田, 正之, 中里, 馨, 代田, 浩之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2004
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Summary:症例は44歳男性.主訴は失神発作.現在まで2回,失神発作の既往あり,いずれも回復まで数十秒間を要し,うち一度は失神に伴い転倒,頭部外傷を起こしている. 外来で施行したホルター心電図で3.6秒の洞停止が記録されており,精査目的で入院となった. 入院後心臓電気生理学的検査(EPS)を施行.大腿静脈穿刺の際,気分不快を訴えた後に洞性徐脈となり,その後12秒以上持続する洞停止を来し失神に至った.硫酸アトロピンの静注および心臓マッサージにより洞調律に復し,その後意識も回復した.EPSを行ったが,オーバードライブ洞抑制試験による洞結節回復時間の延長は認めず,迷走神経過緊張によると考えられるA-H Wenckebach rateの低下を認めたのみで,器質的な刺激伝導系の異常は確認されなかった. 入院経過中にHead up tilt test(HUT)も行ったが,baseline tilt およびisoproterenol 0.01γ 負荷下でのtilt いずれも陰性であった. 本症例は心抑制型の神経調節性失神と考えられ,長時間におよぶ心停止が確認され,外傷の既往もあることからRate drop response(RDR)機能を有するDDDペースメーカーの植え込みを行った.退院時に生活指導もあわせて行い,外来経過観察中であるが,RDR機能が適切に作動し,発作予防に有用であることも確認された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.36.Supplement3_5